ところで、金正恩氏が乗っていた独製メルセデス・ベンツのSUVの購入ルートについてだ。権栄録氏は2009年末に平壌に戻った後、健全ならば中国に頻繁に足を運び、そこで独製の高級車などを調達していたのではないか。中国側も国連安保理決議の制裁などは無視して、北側の要望に応えているはずだ。同時に、中国に拠点を置くドイツの自動車メーカー、メルセデス・ベンツ社の中国子会社は“お得意様”の権栄録氏の注文を無視することはないだろう。

まとめると、権栄録氏は【平壌】から【北京のベンツ関連会社】に電話を入れ、注文する。それを受け、【ドイツ】で北側の特注の高級車を製造し、それを【北京の中国企業】宛てに輸出する。そして同会社が鉄路で【平壌】に送る、というルートだ。

ちなみに、ドイツは輸出大国であり、中国はドイツにとって最大の貿易相手国だ。例えば、ドイツの主要産業、自動車製造業ではドイツ車の3分の1が中国で販売されている。2019年、フォルクスワーゲン(VW)は中国で車両の40%近くを販売し、メルセデスベンツは約70万台の乗用車を販売している(「輸出大国ドイツの『対中政策』の行方」2021年11月11日参考)。

韓国側は調査しなくてもメルセデス・マイバッハGLS600が金正恩氏の手に渡ったルートを知っているはずだ。それをわざわざ「統一部が北側が独製高級車を入手した経路を調査する」と発表したのは、国連安保理決議を違反している中国とドイツ両国の企業を名指しで批判することは外交的に得策ではないという判断もあって、両国に警告を発する狙いがあったと受け止めるべきだろう。

古参の同志を追悼する金正恩書記 北朝鮮HPより(編集部)

 

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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