ウクライナ支援問題では、米国だけではなく、欧州諸国も揺れ出している。欧州連合(EU)27カ国で対ウクライナ支援で違いが出てきている。スロバキア、ハンガリーはウクライナへの武器支援を拒否し、オランダでも極右政党「自由党」が11月22日に実施された選挙で第一党となったばかり。もはや前政権と同様の支援は期待できない。欧州の盟主ドイツは国民経済がリセッション(景気後退)に陥り、財政危機に直面している。対ウクライナ支援でも変更を余儀なくされるかもしれない。
欧州議会の中道右派「欧州人民党グループ」のマンフレッド・ウェーバー代表は、「ウクライナがこの戦争に負ければ平和はない。プーチン大統領は我々を攻撃し続けるだろう。プーチン大統領が移民を政治的武器として利用しているため、フィンランドは対ロシア国境を閉鎖している。バルト三国ではロシアからのサイバー攻撃が毎日見られ、スロバキアではロシアからのフェイクニュースが溢れている」と指摘、各国政府首脳に対し、「来週のEU首脳会議ではウクライナ支援の明確なシグナルを送る必要がある」と述べた。
一方、プーチン大統領は11月27日、議会が既に承諾した2024年予算案に署名したばかりだ。同予算では国防費は前年度比で70%増額されている。GDP(国内総生産)に占める国防費の割合は6%。ウクライナ戦争の長期化に備えた準備と受け取られている。
プーチン大統領は来年3月17日実施予定の大統領選での5選を目指して独走態勢を敷く一方、6日にはアラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビア両国を訪問するなど、積極的な外交を見せている。国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)が3月17日、プーチン大統領に戦争犯罪容疑で逮捕状を発布した時、プーチン氏には追い込まれたような困惑と危機感が見られたが、ここにきて余裕すら見せてきているのだ。
以上、2023年の終わりを控え、ウクライナにとって2024年の予測は楽観的ではない。厳密にいえば、かなり悲観的だ。プーチン大統領と停戦・和平交渉に応じるか、それともクリミア半島を含む全被占領地をロシア軍から奪い返すまで戦争を継続するか、ゼレンスキー大統領は厳しい選択を強いられてきている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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