それが磁場の発生です。
超電導状態のコイルを流れ続ける永久電流は、強力な磁場を発生させ続けることができ、核磁気共鳴(NMR)装置はこれを利用しています。
NMR装置とは、磁場中に置かれた原子核との共鳴現象で物質の構造を解析する装置のことです。
物質はすべて原子でできていますが、その中身は電子と原子核です。
原子核は非常に小さな磁石として見ることができ、それは決まった周波数の磁場と共鳴をおこします。これを電気的に測定することで物質の構造を調べることができるのです。
最近アルツハイマー病の発症に肝臓で作られたアミロイドβペプチドが関連しているという研究が発表されましたが、アミロイドβペプチドなどの構造を微量試料から解析するには、超高磁場のNMR装置が必要になります。
こうした医療の現場でも役立つ次世代超高磁場NMR装置の開発に、永久電流という現象は活躍が期待されているのです。
ただ、理屈としては理解できる話でも、実際高い磁場を発生させる超伝導にはいろいろと困難な課題があったのです。
特に永久電流を生み出すためには、コイル部分だけでなく、回路を閉じるためのスイッチ部分も超伝導状態にしなくてはなりません。
この超電導接合技術は、高磁場の超電導では特に技術的困難が多くあったのです。
理論上300万年間電流が流れ続ける回路
超電導という現象はそれを引き起こせる温度によって、いくつかの区切りがつけられています。
液体ヘリウムの温度(マイナス269℃)で超電導状態になるものを「低温超電導」。
液体窒素の温度(マイナス196℃)で超電導状態になるものは「高温超伝導」と呼びます。
こうした研究の中で、高温超伝導線材を使って、液体ヘリウムの温度まで冷やす(低温超電導を起こす)と、低温超電導線材を使った場合より、はるかに高い磁場を発生させるとわかりました。