日本で3日、20年ぶりに新しい紙幣が発行された。海外に住んでいると、日本紙幣を手に入れる機会はほとんどない。ましてや3Dホログラムなどの最新の偽造防止技術を駆使して造られた新紙幣をウィーンでお目にかかることはここ暫くはないだろう。
日本のメディア報道によると、キャッシュレス時代に新たな紙幣を発行することに疑問を呈する声がある。1万円札の肖像を飾った渋沢栄一については様々なゴシップが流れ、紙幣の顔には相応しくないといった指摘もあるという。いずれにしても、今回の新紙幣が最後の紙のお金で、今後はデジタル通貨が市場を席捲し、紙の紙幣は消えていくという予測が聞かれる。
時代と共に「お金」に対する人間の概念、意識が大きく変わってきた。このコラム欄で9年前、ドイツ人哲学者クリストフ・トュルケ氏(Christopf Tuercke)の「お金」に対する宗教性について紹介した。「お金に潜む人間の贖罪意識」がデジタル通貨となった場合、どうなるだろうか。人間社会の発展に伴い「お金」に潜む贖罪感は霧消してしまうだろうか。
9年前のコラムだが、ここに再掲載する。このコラムが問いかけているテーマは今でも変わらない。新しい紙幣が発行された。「お金」のルーツについて改めて考えることも悪くないだろう。
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