この人間関係の空気が悪ければ、仕事への意欲を挫いてしまう。「入社する人間はランダムなのだから、会社側でコントロールなどできないのでは?」と思うかも知れないが、そんなことはない。企業の人間関係はほぼ経営者で決まってしまうコントローラブルな要素だからだ。

昔、社長の人格レベルに問題があったベンチャー企業に身をおいた時期があった。会議とは名ばかりで重役を吊し上げて暴言を浴びせ続け、「頑張らないとお前らもこうなるぞ」と恐怖政治を敷いていた企業だった。当然、重役含め社員の精神はささくれており、1言えば10返ってくるような攻撃性に満ちていた。おそらく、反撃できない弱さを見せれば、たちまち蹂躙される恐ろしさからだろう。

一方で別の企業では社内は柔和な人間関係で、誰一人怒りをあらわにする人間はいなかった。社長も平和的で人間的に尊敬できる人格の持ち主であり、入社してくる人も似たような人が続いた。結局、社長のレベルが社内の人間関係を決めてしまうのだ。

正当な評価がない

仕事では「自分は正当な評価がされていない」と判断されると、仕事のやる気が無くなってしまうものである。特にベテラン社員ほどそれが顕著だ。

オーナー社長の場合、仕事のやる気がなくなるという話をほぼ聞かない。これはマーケットからの支持が売上に反映されることで、「正当な評価」を毎日受けているからである。実際、仕事は正しい努力をすれば遅効で確実に結果に反映される。

その一方で自分の努力で売上を作れる営業マンとは異なり、管理部門やサポート部門などコストセンターで働く社員は社内での評価基準が必要不可欠になる。なぜなら外部の顧客との接点がないため、評価基準が不完全であれば「頑張るだけ損」という負のインセンティブが働くためだ。

業務効率やコストカットに貢献したなら、その部分を正当に評価して給与やボーナスに反映する仕組みを作る必要がある。そうしなければ、有能な人ほど正当に評価してくれる場所へ移動するし、「時給、月給だからとりあえず最低限仕事をすればいいや」と意識が低い人だけが残ってしまう。