大きな社会的問題を起こしかねない懸念
業務スーパーは「食の製販一体体制」を掲げ、自社で企画・製造するオリジナル商品を拡充させている。原材料の生産・加工・販売を自社で行い、国内に25拠点の食品加工工場を構え、国内自社アイテム数は約370に上る(23年11月現在)。加えて、世界に350を超える協力工場を持ち、「世界の本物を直輸入」をコンセプトに掲げており、海外直輸入アイテム数は1680に上る。輸入商社や問屋を介さずに工場から直接買い付けることでコストダウンを実現している。
今年8月時点の店舗数は1074に上るが、小売チェーン関係者はいう。
「業務スーパーは毎月、新規店舗を複数出店するなど積極的な拡大を続ける一方、食品の品質問題による自主回収の頻度が減っておらず、毎回短いリリースで商品を会社に送付してくださいと呼び掛けるのみ。安全管理の見直し・強化に力を入れて取り組んでいる姿勢が見えず、このままだと将来、小林製薬のような大きな社会的問題を起こしかねないという懸念を感じます。全国に1000店以上を展開する大手チェーンにしては自主回収の頻度が多すぎるし、その姿勢にも疑問を感じます」
別の小売チェーン関係者はいう。
「海外の工場から直接買い付けているとのことだが、協力工場といっても自社運営ではなく、定期的な監査などは行っているかもしれないが、製造・衛生の管理基準・マニュアルは各工場の運営会社のものとなり、業務スーパーが細かいところまで管理しているわけではない。加えて海外の工場となれば、国によって法令や当局による取り締まりの厳しさには差があるし、工場によっては衛生・安全管理が杜撰なところもあるかもしれない。地理的に日本から離れていれば、自ずと監視の目も行き届きにくくなる。
輸入商社が介在することで、商社でも仕入先の選別や品質チェック・管理が行われるが、商社が介さないことで、これらについて全責任を業務スーパーが負うことになる。コストダウンの面ではメリットが生じる一方、業務スーパーがそのあたりをどこまで徹底しているのかが気になる」(24年9月14日付当サイト記事より)
また、流通ジャーナリストの西川立一氏は23年10月3日付当サイト記事で次のように指摘していた。
「他の大手流通チェーンに比べて、商品回収の頻度が多いように思います。業務スーパーのオリジナル商品はアジアやヨーロッパをはじめとする海外の工場・メーカーからの直輸入が多く、なかなか監視の目が行き届きにくいという面はあるでしょう。発売前にどこまで現物を検査しているのかはわかりませんが、すべての商品の中身を検査することは不可能なので、検査が不完全になっている可能性もあるでしょう。
業務スーパーは安さを売りにする小売チェーンですが、食品の取り扱いにおいて品質の安全性確保は最優先すべきであり、多少のコストがかかっても取り組むべき事柄です。今の消費者は『安さ+安心・安全』を求めており、『安さ』だけでは消費者の信頼・支持を得続けることはできません」(流通ジャーナリストの西川立一氏/23年10月3日付当サイト記事より)
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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