■ジャンル分け不能のホラーヌーベルバーグ
映像も変だが、書籍も変だ。だいたい映像作品を書籍化したこうした本は、ノベライズか設定資料集か製作秘話になるものだが、『フェイクドキュメンタリーQ』はいずれでもない。
書籍で紹介されている6話+書き下ろし2話は、フェイクとして作られた映像で説明されなかったバックグラウンドや経緯が語られ、さらに映像世界を深化させる設定や資料が追加されている。副読本でもないし、何といえばいいのだろうか。しかもQRコードでYouTubeの映像に飛ぶことができる。書籍というアナログの媒体で、やっていることはゲームのようなデジタルなギミックなのだ。
「YouTubeというものの書籍化として一番避けたかったのは、ただ単に文字のものを書き起こすことでした。ちょっと内容を足すとか、そういうのはあるんでしょうが、それがノベライズ版と呼ばれるのはつまらないなと思っていました。どうせやるなら、何かしらの後日談であったり、新しい映像とか音声を入れようと。我々は映像制作集団なので文章での表現は、他の作家さんのようにできない。だから作家さんにはできないことをしよう、それしかないと考えて、それは入れさせていただきました」(寺内)
山の中で謎の白装束集団に襲われる話(『Sanctuary』)は、映像版では彼らが何者なのか、一切の説明がない。書籍版には、その背景として、なんと小学生の自由研究が追加されている。小学生が自由研究で町の歴史を調べ、かつて呪い山と呼ばれる聖地があったことをつき止め……という話だ。だから子どもの書いた自由研究が書籍では紹介されている。
「あれを作ったのは僕です」と寺内監督。
「小道具は僕が全部作ってるんです。相手になりきって、いわば憑依して作るんですけどね、いつも。そういうのは楽しいんですよ。なんか、本当に気持ちがバーっといろんなものになりきると楽しいんです」(寺内)
器用すぎる。親戚の子どもに頼んだと思ったぐらい、字も絵も子どもだ。これは元々『Sanctuary』を撮った時に設定されていたのか?
「イメージとしてはあったんですけど、その表現を誰がするか、子どもの絵については後で考えてますけど、でもやっぱり背景みたいなのは考えないと。闇雲に適当な謎っぽいことだけ散りばめるっていうのはバレるんですよね」(寺内)