2005年に現職に就くまで、ラヴァンは、料理学校やいわゆるグランシェフたちのもとで料理を学んだ経験はない。それゆえ、モナコでの初期の日々は、フランス料理の正統を取得していない、という負い目を常に感じていたという。
が、ある時、モナコの同系列ホテルの3つ星レストランを手がける巨匠アラン・デュカスに、「君のこれまでの体験は特別で貴重なもの、君自身の歴史を自信を持って語るべきだ」と言葉をかけられた。これが天啓。正統を学んでいないからこそ、唯一無二の生い立ちがあるからこそ、という意識と向き合い、感性が自由に赴くまま創造を行うようになり、彼の料理はどんどん進化した。
並行して、地元の生産者や食材への理解を深め、ホテル敷地内と近郊に広大なポタジェを作り、故郷の特産野菜やハーブなどを育て、よりクリエーションの幅を広げてきた。
そんな意識改革の結果が、2022年のミシュラン2つ星につながったのだろう。
昨年の大改装を経て、さらなる高みに向かってギアをアップした「ブルー・ベイ マルセル・ラヴァン」。多くのガストロノミーレストランが鎬を削るモナコにあって、一際異彩を放っている。
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Blue Bay Marcel Ravin
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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