では、シヴェター氏らが発見した貝虫のペニスとはどのようなものだったのでしょうか。
チームが見つけた貝虫の化石は体長1ミリほどの小さなものでしたが、目や付属肢、呼吸するためのエラといった軟部組織がほとんど無傷のまま残されています。
そしてデジタルスキャンにより3Dモデルを作成したところ、体の後部に非常に長い突起が伸びているのに気づきました。
これこそが現在記録されている”世界最古のペニス”だったのです。
実際の画像はこちらから閲覧してください。
(※ 一番右のコピュラトリー・オーガン(Copulatory organ)というのが生殖器官のことです)
しかも貝虫のペニスは体長の約3分の1を占める巨大なものでした。
これは比率でいうと、貝虫がとんでもないサイズの生殖器官を持っていることを意味します。
さらに驚くべきは貝虫が長さ10ミリもの巨大精子を作ることです。
これは全長の約10倍もの長さに匹敵します。
こうした巨大精子には「受精率の高さ」や「メスを惹きつける」などのメリットがあるといいます。
この発見からシヴェター氏らは、貝虫の化石にギリシャ語で「大きなペニスを持つ傑出した泳ぎ手」を意味する「コリンボサトン・エクレクティコス(Colymbosathon ecplecticos)」との学名を与えました。
4億年もの間、姿形がまったく変わっていない!
こうしてコリンボサトン・エクレクティコスは”世界最古のペニスを持つ化石”として有名になりました。
しかし研究チームはこれと別に、本種の姿が今日も生きている貝虫とほぼ何も変わっていないことにさらなる驚きを覚えています。
シヴェター氏は「この化石が4億年以上も前のものであるにも関わらず、現代の近縁種と驚くほど似ている」と話しています。
つまり、貝虫たちは「これ以上の進化は必要ない、私たちはこれで完成しているのだ」と言わんばかりに、進化の中で変わらないことを選んでいたのです。