『インフォーマ』『ムショぼけ』などで知られる作家・沖田臥竜氏は、現在Twitter(現X)で、ジャニーズ問題に切り込む発言を連発し、さまざまな反響を得ている。そこで展開されるのは、ジャニーズ批判ではない。ジャニーズをめぐる昨今の報道や世論に大きな違和感を感じ、警鐘を鳴らしているのだ。そんな沖田氏よる特別コラム。ジャニーズをも崩壊に導いた、目に見えぬ力の正体とは――。

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(画像=『FUNDO』より引用)

性加害問題を黙殺し、喜多川氏を敬ったマスメディア

 世の中には目には見えぬ、恐怖の存在がある。心霊現象もその一つだろう。だが、それよりも怖いものがある。それは集団心理だ。

 いったんその世界に入ってしまうと、感覚すらも麻痺し、合理的な思考力や判断力が欠如してしまう。結果、人心の根底に眠る歪みが放出され、平然と人を攻撃し、傷つけることがまかり通るようになるのである。さらに、マスメディアまでがその空気に飲み込まれ、暴走して見せるとどうなるのか。

 そう、あのジャニーズ帝国ですら崩壊させてしまうのだ。よくよく考えてほしい。ジャニー喜多川氏が他界したとき、涙するタレントやファンがあれだけいた。マスメディアは喜多川氏の功績を哀悼の意とともに大々的に伝え、同氏を敬う空気が醸成されていたのだ。

 それが今はどうだろう。喜多川氏の死をあれほど悲しんだ一方で、性加害問題をこれまで黙殺してきたマスメディアは、喜多川氏を歴史上類を見ない犯罪者だと罵倒し、ジャニーズ叩きに邁進。結果、亡き人間の罪と罰を、現ジャニーズ関係者たちが背負うことになり、挙げ句にジャニーズを崩壊させてみせたのだ。

 喜多川氏と、ジャニーズにかかわる人々の責任を分けることは当然のことだろう。しかも現ジャニーズの経営陣は、喜多川氏の犯した罪に対して、法を超えた責任を果たしていくと明言している。それなのに、ジャニーズを崩壊まで追い詰めた集団心理……現在、圧倒的多数がそこに違和感を覚えていないのだ。怖くないか。そんな現象に恐怖を覚えないか。

 2019年、喜多川氏が緊急搬送された際、私がそのニュースをいち早くTwitter(現X)で投稿したので、よく知っている。

 あの時は「がんばれジャニーさん!」の声がネット上に溢れ返っていた。あれは何かの幻だったのだろうか。当時、喜多川氏が抱えていた性加害疑惑を多くの人が知っていた。それなのに死後、数年経ってから、大犯罪者として扱われているのだ。

 喜多川氏を擁護するつもりは毛頭ない。だが、喜多川氏が生存している時に、この問題を知る人たちが声を上げていれば、状況は変わっただろうし、今となっては当事者不在で事実確認がしようもないことで、喜多川氏本人のみならず、残されたジャニーズの人々が断罪されるという歪んだ事態を生んでいるのだ。

 本来ならば、こうした現象を見て、「それはおかしい」と気づくはずなのだが、集団が一方を批判し始めると、それを見ている人々まで同調し、バランス感覚が麻痺してしまうのである。その攻撃は矛先を先鋭化させつつ、次の話題がやってくるまで延々と繰り広げられるのだ。そして、次の話題ができれば、人々は少し前までの自身の言動を忘れて、平気な顔をしてこう言い出すのである。

「ああ言うのは、よくないよ……。」

 行き過ぎた批判で多くの才能が失われ、仮に路頭に迷う人が出てきたとしても、集団のひとりとして攻撃してきた人々は、罪悪感すら抱かない。それが集団心理なのである。「みんなが言っていたから」「みんながやっていたから」という思いが、すべてを麻痺させてしまうのだ。恐ろしくないか。

 被害生徒が自殺にまで追い込まれたイジメに教師まで加担していた、というニュースを耳にしたことはないだろうか。これはひとつの集団の中で、同調圧力ともいえる集団心理の作用が発揮され、常識的な思考を停止させてしまったのである。みんなが攻撃するから自分もする――そんな集団心理が働いた人々は、攻撃対象から受けてきた、それまでの恩恵や感謝の想いなどすら忘れてしまう。

ジャニーズ叩きはイジメと同じ構図ではないか

 ジャニーズのケースを見てみるとよくわかる。どのメディアもジャニーズ人気に大きな恩恵を受ける一方、ジャニーズタレントのスキャンダルに対しては忖度を働かせてきた。しかし、今、ジャニーズを擁護しようものなら、まるで性加害自体を容認しているかのように位置づけられ、集団に叩かれることだろう。まるで、新たな獲物を見つけてしまったように……。

 だからこそ、「それは、おかしいんちゃうんかいっ」と言える人間が必要なのだ。そして、実際に集団で叩かれるかもとわかっていても、「もうええやんけ」と言える人間は存在する。

 気でも狂っているのか、と圧倒的多数から言われるかもしれないが、そうではない。集団心理が生み出す空気など、普遍的・本質的なものではなく、一過性のものだ。だからこそ、それに恐怖を感じる必要がないのだ。それゆえ、たとえいっとき泥を被ったとしても、言わなければ気が済まないのである。

 なにより、わたしがそんな人間の一人だ。ことの是非はさておき、困っている人間、弱者となった人間を大勢で攻撃する構図に対して、イジメと同様に無性に腹立たしさを覚えてしまうのだ。

 ここで言うべきことを言わなければ、それは卑怯者や臆病者だと考えてしまう。結果として、損をすることはある。集団心理に刃向かうことは、そう簡単に理解されない。黙っていたほうが利口だろう。だが、立ち向かいたい。振り返ったときに、自分自身に後悔したくないからだ。

 人は人、自分は自分である。長いものに巻かれるのも悪くないだろう。だが、そんな人ばかりではない。

 私は最近、上記のような異常な状況に警鐘を鳴らすポストを積極的にし続け、日に日に支持してくれる声が大きくなっていることを感じている。ジャニーズ叩きに偏っていた集団心理に早くもゆらぎが出てきているようだ。

 だが、すでにジャニーズは集団心理の前に崩壊させられてしまった。ジャニーズという名前は消滅してしまった。帝国すら崩壊させてしまう集団心理。それを牽引するマスメディアの中の人々も、組織に身を置き仕事をしているからこそ、安全な場所からジャニーズを攻撃し続けられる。彼らは一方でジャーナリズムを標榜しているのだから、恐ろしいほど、哀れで愚かである……。

 だが、すでに空気は変わり始めている。私にははっきりと、ファンたちを引き連れ、巻き返しを図ろうとするジャニーズの足音が聞こえている。

『インフォーマ』

(沖田臥竜・著/サイゾー文芸・刊)

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(画像=『FUNDO』より引用)

ジャニーズ問題に見る「集団心理」という恐怖(沖田臥竜)の画像2 『インフォーマ』(沖田臥竜・著/サイゾー文芸・刊)  週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉

提供元・FUNDO

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