欧州の政界はハンガリーなど一部の東欧諸国を除くとハリス氏の当選に期待してきた。メディアも同様だ。トランプ氏のスキャンダルは欧州でも大きく報道された。右傾化する欧州ではトランプ氏はそのトレンドを扇動する政治家と受け取られてきたからだ。ハンガリーのオルバン首相が大統領選中にもかかわらずトランプ氏と会談するなど、トランプ氏は欧州の右派政治家からアイドル視されてきた。
選挙戦終盤に入り、世界的なポップスター、テイラー・スウィフトさんがハリス支持を表明した時、強気のトランプ氏にとってもやはり大きな痛手だったと思う。実際、トランプ氏はその直後、「自分はテイラー・スウィフトさんが大嫌いだ」という発言をソーシャルメディアに流している。また、米国で有名な知識人や歌手、女優がハリス支持を次々と表明した時、選挙戦が拮抗していると報じられていただけに、トランプ氏にとって内心穏やかではなかったはずだ。
しかし、メディアはハリウッドの有名俳優や歌手たちのハリス支持を大きく報じたが、選挙結果を見る限りでは、選挙の流れにはあまり影響がなかった。多くの有権者にとってインフレ問題や移民問題といった伝統的なテーマが投票の最大要因だったのだろう。また、「米国人はチェンジを願った」といった解説も聞かれた。華やかなパフォーマンスが展開する米大統領選に目を奪われると、選挙の流れを冷静に分析することが難しくなることを改めて知らされた。
米国の大統領選では欧州のメディアは「もしトラ」をテーマにして報じていた。もしトランプ氏が再選すれば、ウクライナ戦争、中東戦争、中国と米国の貿易戦争、台湾問題といった経済・安保問題がどのように変わるか、といったテーマだ。
トランプ氏は再選すれば、欧州から輸入される製品に対して特別関税を実施するといったニュースが数日前、流れてきたばかりだ。ドイツのニュース専門局ntvで解説者が6日、「トランプ氏は1期目の大統領時代も欧州を脅迫するような発言を繰り返していたが、実際は穏健な政策で終わった。今回もトランプ氏は欧州に対していろいろと要求するだろうが、欧州を完全に敵に回すような過激な政策はしないはずだ」といった希望的観測を吐露していた。