またG7のように脱化石燃料、なかんずく石炭フェーズアウトを唱道するのではなく、化石燃料のクリーンな利用や天然ガスも含め、全てのオプションを追求するとしている。
他方、EUで導入準備の進む炭素国境調整メカニズムを拒絶し、中国産パネルやEVへの高関税を念頭に「グローバルなサプライチェーンを意図的に混乱させ、競争を歪曲する一方的保護措置」を強く批判する等、先進国への舌鋒は鋭い。
またCOP29の主要課題である途上国への資金援助についてはG7サミットが自分たちが主要なドナーであることを認めつつも、「公的資金動員への貢献が可能な国々も含まれること」を主張し、中国、サウジ等の資金貢献を期待しているのに対し、BRICSサミットは専ら先進国の責任を強調している。
このようにG7とBRICSとではエネルギー、温暖化に関する見方が大きく異なる。問題は今後の世界のエネルギー需給の相当部分をBRICS及びパートナー国が占めることとは明らかなことだ。
中国の習近平国家主席はBRICSの勢力を拡大し、西側諸国に対する「防波堤」とすべく、「世界は新たな激動と変革の時代に入った。BRICSをグローバルサウスの団結と協力を促す主要な推進力へと育てるべきだ」と強調した。
資金力と豊富なエネルギー資源を武器にBRICSサウスを取り込む動きは更に強まるだろう。BRICSパートナー国の中には日本が主導するAZECに参加するインドネシア、ベトナム、タイ、マレーシアも含まれている。
G7が脱炭素でいかに野心的なメッセージを盛り込み、他国に同調を求めても、独り相撲に終わるだけであり、BRICSの味方を増やしてしまう可能性もある。途上国の現状を踏まえた現実的なエネルギー転換、温暖化議論の必要性がますます高まっている。本稿執筆時点では結果が見えないが米大統領選の結果も大きな影響を与えるだろう。