削ぎ落す過程では「何が本当に必要か」を考えることになる。

モダニズム思想は、機能主義や合理主義と言われているが、取捨選択の過程において、こだわりの濃縮が生じる。さらには、過剰な装飾を取り払い、シンプルとなることで周囲との調和性が高まるという利点もある。

最低限の機能や装飾であれば、人間の手が加わる余地も出てくる。人の手が加わることでさらにこだわりが詰まり、人の関与する割合が増えることは精神的な豊かさに繋がっていく。

4. おわりに

現実と乖離した未来ばかりを語る政治家。 ユートピアを期待し、裏切られたと他人のせいにする国民。

増加拡大モデルではなく、縮小減少モデルで物事を考えていくフェーズに入った日本。私は、全ての規模が小さくなって、最後に消えることは求めていない。次の成長のためのシュリンク、高密度にするためのシュリンクと前向きに受け止めて行く必要があると感じている。

目先の事だけに捉われず、良いことも、悪いことも、多種多様なマルチシナリオが共有できる日本であることを期待している。

【参考文献】

注1)山田明:1990年代の公共投資と財政,名古屋市立大学人文社会学部研究紀要,11,pp.45-60,2001. 注2)瀬田史彦:人口減少と公共施設の再編,人口問題研究,77,No.2,pp.171-184,2021.6. 注3)藤森照信:モダニズム建築とは何か,彰国社, 注4)佐野潤一:ミース・ファン・デル・ローエの建築理念としての「オーダー」,日本建築学会計画系論文集,79,No.696,pp.553-560,2014.