2001年(平成13年)4月14日午前4時20分頃、栃木県那須塩原市(旧西那須野町)に住む大学生・Aさん(当時24)が、自宅近くの民家敷地内にあるカーポートで惨殺されていたのを発見された。Aさんの自宅は遺体発見現場から数十メートルしか離れていないマンションの一階で、その後の捜査や現場検証の結果、彼女はまず自宅内で犯人に襲われて逃げ出し、負傷しながらも追撃をかわしつつ、マンションの外をぐるりと回るようにして敷地外へ出た上で、助けを求めようと遺体発見現場の民家を訪れたものの、そこで犯人に追いつかれ、致命傷を負わされて絶命したと推測されるという。
なお、Aさんの自宅から見て、街路を隔てた向かい側にある町営駐車場のトイレからは、犯行に使われたと思しき刃物が発見されたという。しかしこの事件、現場周辺やAさん宅に残された証拠が比較的多く確認できるにもかかわらず、犯人を特定する要素に欠け、いまだ解決には至っていない。これが今回考察する『西那須野女子大生刺殺事件』の概要である。
この事件においては、かつてAさんの知人男性が疑われ、事情を聞かれたというが、犯人であると断定する決定打に欠けたのか、この人物については、結局のところ逮捕には至らなかったという。それを踏まえると、当局はこの男性に限らず、Aさんと面識がある人物による犯行であったと見立てていることが窺えるが、おそらくその理由は、(1)Aさんがアルバイト先であるパチンコ店を車で出て、途中、コンビニで買い物をした後で帰宅し、しばらく経ってからの時間帯に事件が起きていると見られる点や、(2)Aさんの部屋はカードキーを使うタイプの物件だが、その使い方がやや特殊であり、初見ではスムーズな犯行が難しいと考えられる点、さらには(3)Aさんが最初に自室内で襲われた(=本意か不本意かはともかく部屋への侵入を許している)という点などからではないだろうか。
たしかに、(1)については、バイト先から自宅までの間で彼女を見かけて尾行し、犯行に及んだというケースもゼロではないだろうが、それにしては犯行までにあまりに時間が経過し過ぎているし、この手の事件にありがちな、「たまたま狙った家がAさん宅だった」というのも、(2)の状況から推測すれば確率的に低いだろう。それに、仮に犯人の主な目的が強盗であったとするならば、「たまたま」入るような時間帯でもない。しかもさらに言えば、Aさん宅のあるマンションにはかなりの部屋数があり、居住している顔ぶれもまちまち。場合によっては犯人よりも腕力がある男性や、格闘技の心得がある住民宅に入ってしまうリスクがあり、犯人目線でいえば、侵入候補の部屋を絞り込むだけでも相当な手間がかかる。こうした理由から、この事件については筆者も、“当局が見立てたであろう犯人像”に近い人物が引き起こしたと推測している。となれば、問題となってくるのは、その「動機」だ。
女子大生Aさんはなぜ殺害されたのか――。無論、その直接的な動機については、犯人しか知る由もないが、少なくとも「強盗に運悪く殺害された」というケースは考えにくいだろう。なぜならAさんはルームメイトと暮らしており、場合によってはその人物が居合わせてしまう可能性も十分に考えられたからだ。
となれば、犯人はAさんの人となり、さらにはアルバイトのシフトや通学・帰宅時間などといった彼女のスケジュールに加え、同居人の行動パターンまで正確に把握していたこととなる。果たしてそのような人物がどの程度、存在するだろう。これは我々の取材活動や、興信所などの調査においても言えることだが、誰かのスケジュールや行動パターンをほぼ完璧に把握することは極めて骨の折れる作業だ。
通常ならば複数人のチームでローテーションを組んだ上で、時間も金も手間もかなりかけた上で行うような作業なのである。それを単独でやろうとすれば、想像できないほどの途轍もない労力を伴うことになることは言うまでもない。しかし、こうした作業を割と粛々と進められるタイプの犯人もいる。それは、ストーカー的な気質とスキルを持った正真正銘のストーカーだ。
被害者であるAさんは、大学での時間はもとより、アルバイト先のパチンコ店でも、不特定多数の人物に目撃・接触される可能性が高い生活を送っていた人物である。もしそうした人物の中に、ストーカー的な気質を持った人物がいたとするならばどうだろうか。実はこれが筆者の考える一つ目の犯人像である。
筆者は経験上、これとは別に、「もう一つの犯人像」というか、少しばかり「気になる点」がある。それは犯人の逃走経路・手段がほとんど見えてこないという点だ。
無論、車やバイク、自転車などを使ってすぐに退散すれば、足取りが見にくいこともあるだろうが、犯行推定時刻、現場周辺には人通りが少ないとはいえ、自宅から目撃したり、車などで周辺を通過した際にたまたま目撃するケースはあるだろう。大都会ならいさ知らず、住宅街であるとはいえ人通りが極端に少ない場所と時間で、もしそうした人物に偶然出くわしたり、目撃したのならば、もっと情報が寄せられてもおかしくないのだ。しかし、現実にはそうした情報がないことを考慮すると、犯人はAさんの住むマンションをはじめ、現場周辺に居住していた可能性が考えられるのではないだろうか。
それならば、ストーカー的な行為にかける労力も少なくできるし、逃走の際も、移動手段に悩むことなく、すぐさまそそくさと自宅に帰るだけで済ませられるのだ。おそらく、犯行後はシャワーでも浴びて、証拠隠滅をゆっくりと行い、なに食わぬ顔して“善良な隣人”として普段通りの生活をしてさえすればいい。実際、2008年4月に起きた『江東マンション神隠し殺人事件』において、逮捕された星川は被害者と同じマンションに住む隣人であった。事件発生当初、彼は“善良な隣人”である体でマスコミの取材に応じ、それがかえってアダとなる形で逮捕に繋がったが、仮に彼がそうした言動をとらなかったらどうなっていただろう。逮捕までにはさらに多くの時間が必要となったのではないだろうか。
なお、当局もこうした仮説に基づいて捜査していた部分があったのか、事件後ほどなく、Aさんと顔見知りであったと見られる中国人男性が事情聴取されているという報道があった。しかも何を隠そうこの男性は、Aさんと同じマンションの住人なのだという。たしかに、それならばややこしいカードキーの使い方も把握しているし、Aさんやルームメイトの行動パターンも掴みやすいことだろう。
また、逃げるAさんを執拗に追い回した上で殺害したのも、口封じという観点では理解できる。この男性については、決め手に欠けていたようで、結局のところ逮捕には至っていないが、同じ観点ですべての住民、それこそ、事件発生時だけでなく、直近まで住んでいた元住民や、住民の部屋に出入りしていたであろう友人・知人なども含めて捜査したらどうなるだろう。ある程度、その“候補”は絞れそうに思われるのだが、如何だろうか。
無論、例によってここまで述べた話は、筆者の妄想に過ぎないが、今回こうした話を記事にすることで、現場周辺に住む人々が、別の角度から事件を振り返り、正しい記憶を取り戻すことで、新たなる有力情報が寄せられる一助になることを期待したい。
文=野島居慎太郎
提供元・TOCANA
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