「何をしないか」ではなく「何をするか」で習慣にしたい目標を立てる
分析の結果,参加者は身体的な健康をはじめ、仕事や睡眠に関するさまざまな目標を立てていました。
どうやら新年には健康面の改善につながるような新たな行動を習慣化する目標を設定する人が多いようです。
そして社会的なサポートを受ける人物の存在を考えた人は、他の何も指示を受けない人、あるいは取り組む行動を設定するよう促された人と比較して、目標に設定した行動の継続率が高くなりました。
Credit: Oscarsson et al., (2020).
この結果だけをみると、「何をするか」と目標を設定するよう促された人は、他のグループの人よりも、行動の継続率が劣っていることになります。
しかし実際に実験者からの助言に従ったか否かで分けるとそうではありませんでした。
実験者の助言に従い「毎日腹筋する」など取り組む行動を目標とした人と比較して、「無駄遣いをしない」などのある行動を禁止する目標を立てた人のほうが、行動の継続率が約12%低くなっていたのです。
この結果は、同じ健康に関する目標を立てる場合であっても、「お菓子やスナックを食べない」という目標よりも「野菜や果物を食べる」という目標を立てた人の方が行動を維持しやすいことを意味しています。
研究チームは「目標設定の表現を変えるだけで効果があるだろう。たとえば減量するために甘いものを控えることを目標にする場合、『お菓子の代わりに1日に1回果物を食べる』と目標を立てるほうが成功する可能性が高い」
「行動を消去することは困難だが、別の行動に置き換えるのは簡単なのかもしれない」と述べています。
これらの結果を踏まえると、新年の目標を立てる時はある行動を禁止したり頻度を減らす目標ではなく、「何をするのか」という目標に言い換えることができないかを考えてみるのが良いかもしれません。
たとえば「お酒を飲むのを控える」なら「水を1日1リットル飲む」に、「スマホを見る時間を減らす」なら「本を読む時間を増やす」という目標に置き換えるのです。
そうすることで目標達成の行動が増え、長期にわたって行動が維持される可能性が高いと言えるでしょう。
参考文献
Want Your New Year’s Resolutions to Stick? Flip the Script
元論文
A large-scale experiment on New Year’s resolutions: Approach-oriented goals are more successful than avoidance-oriented goals
ライター
AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。