2は微妙だが、温暖化の一つの原因が温室効果ガスであることは間違いない。二酸化炭素(CO2)は最大の温室効果ガスではないが、人間の排出量が増えたので温暖化の一つの原因である。しかし最近の急速な温暖化の原因は、中国の大気汚染が改善されて大気中のエアロゾルが減った結果ともいわれる。

問題は3である。2023年に全世界で気候変動対策に使われたコストは1.8兆ドル(270兆円)と推定されているが、地球の平均気温は上がった。熱帯で洪水や干魃が増えたという話もあるが、気候災害の被害は大きく減った。災害対策のインフラが整備されたからだ。

それに対してCO2排出を減らすコストは膨大であり、2050年にそれを実質ゼロにするには全世界で毎年4.5兆ドルが必要である。温暖化の被害がそれより大きくない限り、温暖化対策は正当化できない。

本書はトランプのような「温暖化否定論」ではなく、温暖化が起こっていることは認めた上でその原因を考え、対策の費用対効果を考える「温暖化対策懐疑論」である。これは温暖化を疑うのではなく、それが人類の破滅をもたらすという悲観論を疑うとともに、人間が気候を変えられるという楽観論を疑い、温暖化対策の費用対効果を考えるものだ。