「FUNAI」のブランドで世界的に知られる船井電機が10月24日、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。申請時の負債総額は469億円で、破産の同日に約2000人の全従業員を解雇したことが大きな注目を浴びている。他方で、船井電機と業務提携を結んでいるヤマダデンキが、大きな影響を受けるのではないかとの指摘がでている。そこでヤマダデンキに直接、聞いてみた。
帝国データバンクは10月24日、船井電機が同日付で東京地裁から破産手続きの開始決定を受けたと発表した。同社は1961年にトランジスタラジオなどの電機製品のメーカーとして設立され、テレビやビデオなどのAV機器を中心に製造・販売を行っていた電機メーカー。
1990年代にウォルマートと提携し、全米の同社店舗でFUNAIのテレビをはじめとするAV機器を販売。OEM(相手先ブランドによる生産)供給の拡大やオランダのフィリップスからの北米テレビ事業取得(2008年)などもあり、世界的にFUNAIの名が知られることになった。
2000年代初めには世界最大のビデオ機メーカー、かつ北米最大のテレビメーカーとなった。だが、2010年代に入ると、海信集団(ハイセンス)やTCL集団など中国勢の台頭に押され業績が悪化。大きく経営戦略を転換させ、北米向けの低価格のOEM供給から国内向けの4Kテレビなど高品質商品を自社ブランドで販売する方針にシフト。
2016年にはFUNAIブランドのテレビについてヤマダ電機(現ヤマダデンキ)と10年間の独占供給契約を締結するなどしたが、業績は好転しなかった。2021年には出版社、秀和システムの子会社である秀和システムホールディングスのTOB(株式公開買い付け)を受け入れて上場廃止。2023年に持ち株会社制に移行し、船井電機・ホールディングス(HD)傘下に事業会社の船井電機を置く体制となった。その後、船井電機HDが脱毛サロン「ミュゼ」を展開するミュゼプラチナム(現MPH)を買収したが、1年弱で売却した。これが決定打となり、経営混乱も続き信用不安が広がることとなった。そして今年10月、ミュゼのネット広告代金の未払いについて、船井電機HDが連帯保証を行っていたとの報道がきっかけとなり経営は破綻。同月24日に破産手続開始決定が出された。
FUNAIのテレビを独占販売していたヤマダデンキはどうなる?
そんな船井電機のテレビについて、ヤマダデンキは2006年に業務提携を行い、一度は国内販売から撤退していたFUNAIブランドを復活するきっかけとなった。その後、ほどなくして契約は終了するが、2016年に再度業務提携。10年間の独占供給契約を締結し、船井電機の経営を下支えしてきた。そもそもは、創業者の船井哲良氏とヤマダデンキ創業者の山田昇氏に個人的な縁があり、業務提携が始まったといわれている。
だが、船井電機が電撃的に破産したことから、独占販売のためにFUNAIブランドのテレビやプリンターの在庫を大量に抱えているとみられるヤマダデンキに対し、「在庫をどのように処分するのだろうか」などと影響を懸念する声が噴出している。
ヤマダデンキでは、FUNAI製テレビをただ単に販売するだけではなく、特別に無料で5年または7年の長期保証を行ってきた。例えば「 7年間無料保証」の場合、通常「FUNAI 保証3年+YAMADA 長期保証4年」で合計 7年間、修理保証を付けている。
船井電機の破産が報じられるとヤマダデンキは、HP上で以下のリリース文を掲載し、購入客に対してアフターサービスを続けると発表した。
「弊社と業務提携関係にある船井電機株式会社が、10月24日付で破産手続き開始決定を受けたとの報道がありました。これを受け、弊社としましては、船井電機株式会社の今後の動向を注視してまいります。また、これまでに販売したFUNAIブランド製品のアフターサービスについては、お客様にご迷惑をおかけすることの無いよう販売店として責任をもって対応してまいります」
だが、すでに販売した商品のアフターサービスだけではなく、現在抱えている在庫はどうするのか。また、ヤマダデンキ創業50周年記念モデルとして船井電機とJVCケンウッドが共同した「JVCチューナーレステレビ」の新製品「JL-32S4LW」を11月2日から発売すると発表していたが、その在庫はどうするのだろうか。
そこでBusiness Journal編集部は、ヤマダデンキの広報課に次の通り質問してみた。
――船井電機が倒産いたしましたが、その影響についてご質問申し上げます。貴社では、テレビの独占販売契約を結んでいたかと存じますが、抱えている在庫の影響はどのようにとらえていらしゃるでしょうか。また、在庫がなくなるまで今後も販売し続けるのでしょうか。修理等は続けるとのことですが、どのような体制で受け付けるのでしょうか。
「本件につきましては、現在弊社ホームページにて掲載していること以外にお伝えできることが無い状況にございます。誠に恐れ入りますが、何卒ご理解賜れますと幸いに存じます」(株式会社ヤマダホールディングス 統合経営企画室広報課)
今後の販売体制等について、詳細な言及はできないとした。
インターネット上ではFUNAI製のテレビについて、「FUNAIのテレビは性能が悪くないし、ヤマダが叩き売りするのであれば購入を検討するのもアリではないか」など、ヤマダデンキが抱えている在庫を安売りするのを期待する声もある。
これに対しヤマダデンキの社員は、「当面は安売りすることはないとみています」として在庫処分を急ぐ可能性は低いとの見解を示す。
「船井電機は破産しましたが、船井電機の子会社でFUNAI製品のアフターサービス及びELS事業を行う船井サービスは経営を続けていますし、今後もサービスを継続していくとのことなので、ヤマダデンキとしても特に大きな変更はないと思います」
“世界のFUNAI”ともいわれ、高品質かつ低価格なテレビに定評のあった船井電機の突然の破産が波紋を広げているが、ヤマダデンキにおいては大きな影響はなさそうである。
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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