地下鉄にも踏切が存在するようです。「地下なのに線路を渡る人がいるの?」「作業員の人用?」と思うかも知れません。しかし実際は「地上にある一般の人用の踏切」です。
場所は東京・上野にある、東京メトロ銀座線の車両基地のすぐそば。「地下鉄の踏切」とはいったいどんなものなのか、実際に現地に行って確認してきました。
■ 東京メトロ銀座線の車両基地「上野検車区」にある日本唯一の“地下鉄の踏切”
「地下鉄の踏切」があるのは東京メトロ銀座線の車両基地「上野検車区」。JR上野駅の入谷口を出て、昭和通りを入谷方面に5分ほど歩いたところにあります。
横道に目を向けるとすぐに見えるのが鮮やかなブルーの鉄骨、黄色と黒の警標(けいひょう)や遮断桿(しゃだんかん)。踏切であることを示す標識もちゃんと立っています。
しかし、一般的な踏切と異なるのは、線路の片側が建物の敷地内から伸びていること、そして左右の遮断器付近に鉄柵が設置されていることです。
線路の片側に立つ茶色い建物は、東京メトロの施設「上野検車区」です。
鉄柵越しに中をのぞいてみると、黄色と茶色のボディが特徴的な、銀座線の車両が並んでいます。
「上野検車区」は銀座線の点検を行う車両基地。点検を終えて出庫する銀座線が通る線路が敷地内から伸びており、踏切はそのために存在しているようです。地下鉄の踏切としては日本で唯一とも言われています。
■ 「あぶない」「危険」一般の踏切では見かけない物々しい鉄柵と警告文の理由
踏切を見ていて気になったのが、左右に設置された白い鉄柵。一般的な踏切では、少なくとも私は見かけたことがありません。
敷地側に鉄柵があるのは、関係者以外の侵入を防ぐという観点からまだ分かります。しかし敷地の反対側にも鉄柵があるのは少し疑問です。さらに鉄柵には「あぶない」「高圧通電中」「危険」と大きく注意書きが出されており、物々しい感じも。
調べてみたところ、銀座線は建設費用をおさえるため、トンネルの断面積を小さくすることができる「第三軌条方式」を採用しているそう。これは電車の足元から電気を供給するという方法で、つまり鉄柵の奥の線路には高圧の電流が流れているということです。
見上げてみれば確かに電線(架線)がありません。
踏切部分以外の線路に入ることは、電車の有無にかかわらずそもそも危険なのですべきではないですが、銀座線の場合は線路に足を踏み入れただけで大怪我の危険があります。鉄柵の設置や警告も納得ですね。