日銀は31日の金融政策決定会合で、政策金利である短期金利の誘導目標を「0.25%程度」に据え置いた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、追加利上げについて「見極めに必要な時間やタイミングに予断を持っていない」と強調。その上で「毎回の決定会合で経済・物価の現状を評価し、政策判断していく」と述べ、次回12月会合での利上げの可能性を排除しなかった。

 利上げを判断する上で重視してきた米国経済の先行きについては「下方リスクは少しずつ低減してきている」と説明し、「霧が晴れつつある」と語った。7月の利上げ決定後、乱高下した金融市場も「少しずつ安定を取り戻している」と指摘した。

 前回9月会合で、植田氏は米国が景気後退せずにインフレが沈静化するソフトランディング(軟着陸)に向かうかどうか不確実性は高いと判断。利上げ判断には「時間的な余裕はある」と表明していた。31日の会見では「(米経済の)リスクに光を強く当てて、時間的余裕を持って見ていくという表現は不要になる」と語った。

 米大統領選を目前に再び強まる円安圧力については「過去と比べ、為替変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている点に引き続き留意する」と警戒感を示した。大統領選では民主党のハリス副大統領、共和党のトランプ前大統領とも財政拡張策を打ち出しており、「政策次第では新たなリスクが出てくるので各会合で点検する」と指摘した。

 日銀は31日、最新の景気予測「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も公表した。消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率について、2025年度は前年度比1.9%(7月時点は2.1%)、26年度は1.9%(同1.9%)と予想。26年度に向け2%の物価上昇目標が持続的・安定的に実現するとの想定を維持した。

 植田氏は、経済・物価が見通しに沿って推移すれば「政策金利を引き上げる」と述べ、従来の利上げ方針を重ねて表明した。衆院選後の政局流動化には「政策的に大きな動きが打ち出されれば、(物価見通しに)影響するので適宜修正していく」と説明した。 

 植田氏は、過去25年間の金融政策運営を検証してきた「多角的レビュー」を12月会合でまとめ、内容を公表することも明らかにした。(了)

提供元・Business Journal

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