車に対する価値観はさまざまですが、スポーツカー愛好者のなかには「車は絶対MTじゃないと」と考える人が少なくありません。
そうした風潮を裏付けるように、インターネット上で「スポーツカー AT」と検索すると、サジェスト欄に「ダサい」「つまらない」といったワードが並びます。
一方で近年では、MT設定のないスポーツカーも増えており、またMT設定があっても「あえてATを選ぶ」という人も見られます。今回はATのスポーツカーを所有している方々に、「ATを選んだ理由」について話を聞きました。
惚れた車がたまたまオープンカーだった
MT比率が高い車種のなかでも、とりわけ多くのユーザーがMTを選んでいる車種として、マツダ・ロードスターが挙げられます。中古車サイトに並ぶ在庫を見ても、7割程度がMTの車両ですが、反対に、ATを選んだ「少数派」の人はどのように考えているのでしょうか。
「あまり車には興味がなかったので、AT限定で免許を取って、最初は兄から譲ってもらったムーブに乗っていました。でも、ある日道を走っているときに黄色いオープンカーを見かけて、『めっちゃかわいい!』と思ったんですよね。
家に帰ってからすぐに調べて、NC型のロードスターだというのを知って。MTだと結構高いんですけど、ATなら割と手頃な値段のものも多かったので、思い切って買っちゃうことにしたんです。
なので完全に、デザインに惚れて選んだ感じですね。でもロードスターに乗るようになってから、『運転が楽しい』という感覚もわかるようになってきたので、いつかは限定を解除してMTで乗ってみたい気持ちもあります」(20代女性)
人馬一体を体現したような走り以外にも、歴代ロードスターの個性的なデザインに惹かれる人は少なくありません。3代目となるNCロードスターは、丸っこいフォルムや、くりっとした目つきなど愛嬌のあるルックスを特徴としています。
車を選ぶ基準は人それぞれですから、走りをウリにしている車であっても、まず「デザインありき」で購入する人もいるのでしょう。
「車との一体感」だけがスポーツカーの魅力じゃない
上のお話にもあるように、運動性能に優れるスポーツカーであっても、「実際の購入者がどこに惹かれるか」はさまざまです。さらに運動性能に魅力を感じていたとしても、「どういう乗り方をしたいか」によってトランスミッションの選択が変わってくることもあるでしょう。
「昔はMTのスポーツカーに乗っていましたが、もう年齢的に『自由自在に車を操りたい』という気持ちもないですし、大排気量のエンジンをATでゆったり乗りたいと思い、Z34のATを選びました。
もともとフェアレディZという車も、神経を尖らせて乗るというよりは、優雅にワインディングを流すような車だと個人的には思っているので、ATとの相性もいいと思いますし。妻と2人で旅行に行くのにも必要十分で、道中にもほどよくワクワク感があり、こういう乗り方も悪くないと思いますね」(60代男性)
スポーツタイプに分類される車のなかには、「グランドツーリング」と呼ばれるように、快適な長距離ドライブに適したモデルも少なくありません。とくに大排気量がもたらす加速の余裕や、低重心による高い操縦安定性といった要素は、長距離を運転するうえで大きなアドバンテージになるでしょう。
このように「性能を活かしてゆったりと乗る」というのもスポーツカーの醍醐味の1つであり、そうしたニーズに対しては、やはり運転操作の少ないATがマッチしていると考えられます。
乗ってみたらATでも全然アリだった!
一般に、スポーツ系の車種は「趣味の車」と見なされる傾向にありますが、家族構成などの事情によって「生活の足を兼ねた車」として選ばれることもあるでしょう。そうした場合、「家族共用の車」としてトランスミッションが限定されるケースもあるようです。
「シンプルに、妻も運転するからですね。もともと家族の車としてセレナがあったんですけど、仕事の関係で1台だけじゃ不便になってきたので、もう1台通勤にも趣味にも使える車を買おうという話になって。
そこで、ハッチバックで使い勝手のいいスイフトスポーツが候補に挙がったのですが、家の駐車場の配置的に、夫婦がどちらも運転できないと不便なんですよね。もちろん私としてはMTに乗りたかったんですけど、やっぱり『夫婦で使えること』が絶対条件だったので……。
ただ、試乗する前は『ATでスポーツ系の車種なんて意味がない』と自分も考えていたんですけど、これはいい意味で裏切られましたね。普通にシフトチェンジのブリッピング(エンジンの回転数を合わせる操作)もしてくれますし、変速もスムーズで、『ATでもめちゃくちゃ楽しいじゃん』と。
自分の考えが時代遅れだったんだと思い知らされました。渋滞のストレスもないですし、仮に自分だけが使う車だったとしても、この出来ならATを選んじゃうかもしれませんね」(40代男性)
AT限定免許の割合が増加している現在、スポーツ系の車種であっても、「家族の免許所有車全員が運転できるATモデル」の需要は高まっているのかもしれません。
スーパーカーなどでも「ATのみ」の設定が増えている近年では、ダイレクトな操作感を実現しながらスムーズな変速を楽しめるATがさまざまに展開されています。家庭状況などからMTを選択することが難しいスポーツカー愛好者にとって、こうした高性能ATは強い味方になってくれるでしょう。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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