1991年の制度新設以来、「AT限定免許」を取得する人の割合は年々増加し、現在では新規取得者の約7割がAT限定免許を選択しています。乗用車のほとんどがAT車である現状、MT免許を「無用の長物」と考える人は多いのかもしれません。

一方で、一度AT限定免許を取得しても、後になってからMT免許へと限定解除する人も見られます。AT限定を解除する人は、一体どんな理由で切り替えているのでしょうか。解除する際の苦労やその後のお話を含め、AT限定を解除したドライバーに話を聞きました。

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苦労して解除、実際に乗ったのは数回だったけど…

苦労して解除、実際に乗ったのは数回だったけど…

「クラッチペダル踏んだことないの?」と煽られ…“AT限定免許”の“限定解除”は難しい?「MT車乗れる」以外のメリットは?経験者に聞いた
(画像=©sugiwork/stock.adobe.com、『MOBY』より 引用)

AT限定を解除する理由として、「パートナーの車がMTだった」というケースが考えられます。今回のインタビューにおいても、結婚相手がMT車に乗っていたことから、限定解除に踏み切ったという方がいました。

「夫が昔から車好きで、付き合いはじめた頃にもMTのスポーツカーに乗っていました。結婚するにあたり、私も彼の車を運転できた方がいいということで、すぐに限定解除したんですよね。趣味をある程度大事にすることも、長い結婚生活では重要かなって。

限定解除は所定の時間内でできたんですけど、やっぱり大変でしたね。クラッチの操作も正直覚束ないままでしたし……。あと、予想外に苦労したのが、色んな確認作業を思い出すことでした。

乗車前の確認や、乗ってからエンジンをかけるまでの手順、運転中も踏切でちょっと窓を開けるとか……。一度習慣になってしまっているものなので、試験のためにおさらいするのは結構しんどかったですね。

でも、結婚して1年ほどで子どもができて、スライドドアの車に乗り換えたので、実際に夫のMT車を運転したのは3回か4回くらい。あんまり意味はなかったかなと思いつつ、夫はいつかまたMT車に乗りたいと考えているようなので、そのときまた活かせればいいかなって。

年齢を重ねて、子どもを育てながらだと限定解除も大変だと思いますし、あのタイミングで解除しておいたのは間違っていなかったと思います」(30代女性)

このように、「配偶者がMT車に乗っているから」という理由で限定を解除する人は一定数いると考えられます。解除の際にはMTの操作を覚える必要があるほか、「運転免許試験の注意点」を思い出さなくてはならず、相応の負担が生じるようです。

ただ、さまざまな苦労にもかかわらず解除に踏み切る姿勢には、パートナーに対する思いやりが感じられますね。

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乗る機会はないけれど、なんだか悔しくて

乗る機会はないけれど、なんだか悔しくて

「クラッチペダル踏んだことないの?」と煽られ…“AT限定免許”の“限定解除”は難しい?「MT車乗れる」以外のメリットは?経験者に聞いた
(画像=©taka/stock.adobe.com,『MOBY』より 引用)

AT限定を解除するには、あらためて教習所に通う方法が一般的です。その際は「4時間以上の講習」が必須であり、費用としても5万円前後がかかります。手間とコストを考えると、「よほどの理由」がないかぎり解除することはないと思われますが、とくにMT車に乗る必要性もないのに限定を解除した人も。

「大学1年にAT限定で教習所に通いはじめたんですが、同時期に通っていた友達が2人いて、どちらもMTだったんですよね。免許や車の話になるたび、2人が『半クラが~』とか『坂道発進が~』とか話しているのを聞いて、ちょっと疎外感もあったんです。

その時点で『自分もMTの方がよかったのかな』と思うこともあったんですが、まぁどうせATにしか乗らないし、そのまま限定で取ったんですけど。なんだかその後も、免許の『AT車に限る』という記載を見るたび後ろ髪を引かれるような気持ちが残っていました。

就職が決まってから、『ずっと気にするくらいなら、今のうちに解除しちゃおう』と思って、限定解除のコースに通いました。最初に思ったのは、『えっ、アクセル踏んでも走らないじゃん。全然違う乗り物じゃん』ということですね。

ネットとかでAT限定をバカにする人をよく見かけますけど、最初に乗ったときは正直ちょっと納得してしまいました。難易度違いすぎるだろって。4時間の教習中、ずっとガクガクしてましたよ。

今でもMT車を運転する機会はないですけど、車がどういう風に動いているのか、AT限定だった頃より掴めるようになった気がして、解除した意味はあったなと思っています」(20代男性)

現在ではAT限定免許が新規取得者のなかで「多数派」となり、限定だからとケチをつける風潮は弱まっていると考えられます。

一方で、インターネット上などでは依然としてAT限定免許に対して「マウント」をとる人も見られます。人によっては、そうした声が我慢ならないという人もいるのかもしれません。

ただ今回のお話では、「MT車を操作した経験はその後にも活きている」とのことですから、精神衛生的な面のほかにも限定解除のメリットはあったのでしょう。

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子育て後の新しい趣味に

子育て後の新しい趣味に

「クラッチペダル踏んだことないの?」と煽られ…“AT限定免許”の“限定解除”は難しい?「MT車乗れる」以外のメリットは?経験者に聞いた
(画像=©Moose/stock.adobe.com,『MOBY』より 引用)

さらに、免許を取得したときは車に興味がなかったけれど、その後になってMT車に乗りたいと思うようになった、というケースも聞かれました。

「免許を取ったのが90年代の後半で、26歳のときでした。もともと運転する機会はないと思っていたんですけど、子育てのために運転できた方がいいなと思い、AT限定で取ったんです。

でも運転しているうちに、『自分でドライブするのってこんなに楽しいんだ』と思うようになって。街でオープンカーなんかを見て、『気持ちよさそうだな、運転してみたいな』とずっと思っていたんですよね。

それで、少し前に一番下の子が大学に入ったので、そろそろ自分も趣味に生きようかなと。以前からデザインに惹かれていたZ34のロードスターを探して、せっかくならMTで乗りたいと思い、車を探しつつ限定解除に通いました。

もう新しいことを覚えるような歳ではないと思っていましたが、『憧れの車に乗れる』というワクワク感もあって、自分でも驚くほど集中して操作を覚えられましたね。『これが半クラか~!』みたいな感じで、いちいち感動しっぱなしだったので、むしろ教習時間が短すぎて物足りないくらいでした。

運転ももちろん楽しいですし、息子や娘からは『いいなぁ』とか『乗せて』とか言われて、なんだか新しい自分が見つかったような感じがありますね」(50代女性)

長い人生のなかでは、どんなタイミングで何に興味が芽生えるのか、というのは予測できません。こちらのお話にもあるように、AT限定の解除が「新しい世界への扉」となるケースもあるようですね。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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