「闇バイト」によって、さまざまな犯罪に手を染める若者が後を絶たない。しかも、その多くが闇バイトであることを知らずに応募し、強盗事件などを強要された挙句、厳しい法の裁きを受けることになっている。今はスマートフォンなどで気軽にバイトに応募して働くことができるようになったが、その一方で「闇バイトだと気が付かずに応募→無期懲役で事実上の終身刑になる」という恐ろしい経緯をたどる恐れもでてきた。このような闇バイトを見抜く方法はあるのだろうか。
ここ数年、闇バイトによって集められた若者たちによる犯罪が相次いでいる。特に今年8月以降、関東地方で連続して発生している強盗事件は、社会の大きな関心を集めている。
この連続強盗事件は、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県で少なくとも14事件が確認されており、警視庁と埼玉、千葉、神奈川の3県警は合同捜査本部を設置し、指示役の特定など事件の全容解明を急いでいる。
いわゆる闇バイトは、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)が関与していると考えられている。トクリュウは、2022年5月から2023年1月にかけて全国で発生した同一グループによる連続強盗事件、いわゆる“ルフィ事件”で注目されるようになった犯罪形態で、指示役がSNSなどで実行役を募集して犯罪を指示するなど結びつきが浅い犯罪グループを形成している点が特徴。
実行役の多くは、通常のバイトだと勘違いして闇バイトに応募している。しかも、指示された集合場所について初めて犯行の内容を知らされているケースがほとんどで、複数犯の場合も初対面のことも多いといわれている。指示を拒否したくても、応募の際に住所・氏名・身分証明書などの個人情報を指示役に提供していることから、報復を恐れて従わざるを得ないと考え、犯罪に手を染めたとの報告も少なくない。
10月28日にも、闇バイトで大麻草を密輸したなどとして、大麻取締法違反などの疑いで24歳の男が逮捕された。報道によると、男は「海外から荷物を受け取り、指定場所に送付するだけで報酬がもらえる」と指示役に伝えられたという。
闇バイトだと気が付かずに応募→無期懲役で事実上の終身刑も?
SNSなどでバイト募集を見つけ、お金欲しさに気軽に申し込むと、闇バイトだったということが、頻発している。SNSが普及した今、このような闇バイトに騙される若者は増加していくことが予想される。見破る方法はないのだろうか。また、闇バイトに手を出してしまった場合、どのように対処すればいいのだろうか。元東京地方裁判所判事に見解を聞いた。
「まず、闇バイトに手を出してしまった場合のリスクを把握しておきましょう。仮に強盗を指示され、民家や貴金属店などで強盗を行ったとします。強盗は5年以上20年以下の懲役が科される重い犯罪で、初犯でも実刑の可能性は高いです。被害額や件数、事件後に弁済できるのか、どのくらい反省しているのか、被害者と示談が成立しているか、といった多くの事情が考慮されるので一概にはいえませんが、起訴されれば最低でも3年前後の実刑は覚悟すべきです。また、強盗の際に誰かをケガさせた場合は強盗致傷、死に至らしめた場合は強盗致死、意図的に殺害した場合は強盗殺人と罪が重くなっていきます。
強盗致死も強盗殺人も、刑法上は『無期懲役や死刑』と量刑が決まっています。金銭目当てに強盗を行い、その際に人を死に至らしめた場合に受ける刑罰は、それほど重いのです。事情によっては、まれに強盗致死の場合に有期刑となることもありますが、それでも20年以上は刑務所から出られないと考えたほうがいいでしょう。つまり、闇バイトだと知らずに応募し、命令に従って強盗を行っただけ、との言い訳をしたところで、強盗の際に誰かを死に至らしめれば、無期懲役か死刑となることを覚悟しなければなりません。
では、そのような闇バイトに申し込んでしまった場合の対処を考えてみましょう。闇バイトは、SNS上で応募してきた人に対し、最初に履歴書や身分証明書を送信させ、それから秘匿性の高いアプリを使用して指示を出しています。“個人情報を渡してしまっている”という心理を悪用して、『逃げたら殺す』『家族に危害を加える』などと脅しをかけているケースも報告されています。しかし、犯罪を指示された場合には、言いなりにならずに警察に相談しましょう。実際に闇バイトに加担しそうになった人から相談を受け、警察が保護しているケースも複数あります。
次に、闇バイトに引っかからないために、自身のリテラシーを高めましょう。SNSで流れてくるバイト募集に応募しない、SNSでバイトを検索しない、大手のアルバイト情報専用サイトなどを使う、という点が基本になります。また、闇バイトに引っかかった人たちは、『高額日当』『即日払い』『即金』『ホワイト案件』といったワードを用いて検索している傾向が高いといいます。募集する側が『ホワイト』などと謳っているところは、ブラックだと疑うべきです。さらに日当が5万円以上するような超高額バイトは、極めて危険です」
高額な報酬や即日払いを求めて仕事を探している人は、なんらかの事情で、急いでお金を工面しなければならず、焦っている可能性が高い。そんな状況下で、「高額日当」「即日払い」といった甘い言葉に吸い寄せられ、冷静な判断ができなくなっているのかもしれない。だが、いくら人手不足の時代でも、簡単に大金を稼ぐ仕事などないと心得るべきなのだろう。
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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