自分のイメージを守れる限り不正を犯してしまう
彼らはオンラインで募集した135名を①「過去に犯して、結果的に上手くいったズル」について紙に書き出す人と、②「人生の上手くいかなくなった時の計画」について紙に書き出す人の2つのグループに分け、以下の文章を読んでもらいました。
「ある日、あなたは仕事終わりに個人的な書類をコピーし、CDと一緒に郵送する必要がありました。しかし帰り道に封筒等を購入する店舗がないことに築き、会社のコピー機、封筒を使用しました。」
この行為は会社の備品を私的に利用・持ち帰ることは、業務上横領罪や窃盗に該当する可能性があります。
参加者にはこの行為に対し「あなたはどれだけする確率がありますか?」という問いに答えてもらいました。
実験の結果、人生の上手くいかなくなった時の計画を書き出した人と比較して、事前に「過去に犯したズル」を書き出した人は上記の不正行動を行う可能性が低いであろうと回答したのです。
この倫理に反する行動を抑制する傾向は、ほかの実際に病気でないのに仕事を休む、追加の仕事を避けるために意図的に作業ペースを落とすなどの場合にもおいても確認されました。
これらの結果は、事前に過去のズルを思い出すことで、道徳的な気持ちが芽生えたかのように思われますが、研究チームはこの効果が生まれる理由について次のような見解を述べています。
「私たちは、誘惑が自分のイメージを壊さない限り、倫理に反する行動を避けようとは思わない。多くの人は、気づかぬうちに自分の行動を正当化する心理が働いてしまう。」
「不正が他人に見つかり、それで疑いの目を向けられるかどうかは問題ではない。誘惑に負け、自分のイメージが壊れるのが問題なのだ。」
つまり、あくまでも大事なのは自分のイメージで、それが守られるのであれば目の前の誘惑に弱くなるということです。
しかし事前に過去のズルを思い出すことで、自分のイメージを長期的な視点で捉えることができ、結果的に倫理的な行動を取ることができるようです。
もしかすると「過去のズル」を書き出す機会を、旅行先の買い物など誘惑に負けそうな場面の手前に行なうことで自分の衝動に打ち勝つことができるかもしれません。
参考文献
Anticipating temptation may reduce unethical behavior, research finds¥
Make Better Decisions By Prepping For Temptation
Why good people do bad things
Why good people do bad things: Anticipating temptation may improve ethical behavior, study finds
元論文
Anticipating and resisting the temptation to behave unethically
ライター
AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。