NASAの技術を利用した「パンクしない自転車用タイヤ」
アメリカ・カリフォルニア州の企業「SMART Tire Company(STC)」はNASAとライセンス契約を結び、グレン研究センターのエンジニアや科学者の支援を受けながら、商業用途でのタイヤ開発を続けています。
そして最近、そのSTC社は、新たに自転車用タイヤ「METLタイヤ」を開発しました。
これはNASAの技術の応用であり、形状記憶合金NiTiが使用されたエアレスタイヤです。
従来の自転車用タイヤのようにパンクすることはなく、劣化による交換も必要ありません。
STC社によると、「自転車が寿命を迎えるまで、タイヤを交換する必要はない」とのこと。
このMETLタイヤは、世界最大級のテックイベント「CES2023」で優れた製品を表彰する「CES 2023 Innovation Awards」にて、車両技術とエコデザインの2つの部門を受賞しました。
またMETLタイヤは、クラウドファンディングサービス「Kickstarter」を通じて、資金を調達しましたが、開始15分で目標金額の2万5000ドル(約370万円)に到達するほど人気でした。
自転車用のMETLタイヤ2本は、500ドル(約7万4000円)の支援で入手可能であり、2024年6月には発送される予定です。
ちなみにSTC社は、「なぜ自転車のタイヤなのか?自動車やトラックではないのか?」という質問に対して、「自転車用タイヤは最初の製品である」ことを強調しています。
まず、素早く実現できる自転車用タイヤに取り組み、その後、自動車やトラックへと展開していく予定なのだとか。
もしかしたら、そこまで遠くない将来、NASAの技術を利用したSTC社の「パンクしない自動車用タイヤ」が市場に投入されるかもしれませんね。
宇宙に目を向けて最先端を走るNASAの技術は、今後も、地球に住む私たちの生活をもグレードアップさせていくに違いありません。
参考文献
NASA invented wheels that never get punctured — and you can now buy them
Since 1967, NASA has been developing groundbreaking tire technologies for driving on the Moon, Mars, and now…
Reinventing the Wheel
Space-Age Bicycle Wheels Using NASA Technology
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。