人類は他の猿の仲間から派生し、地上での生活を送る中で、徐々に「体毛」を失ってきました。
体毛を失くしたことで、人類は自然の厳しさにモロに晒されるようになりましたが、代わりに発明したのが「衣服」です。
衣服を利用するようになったことで、人類は幅広い気候に対応できるようになり、地球のさまざまな地域で生活できるようになりました。
また衣服は防寒だけでなく、体表面を守る防護の役割も果たしました。
このことから衣服の発明は人類にとって非常に重要な転換点だったと言えるでしょう。
では人類が衣服を使うことに気づいたのは、いつ頃なのでしょうか?
人体に寄生する「シラミ」を追え!
衣服の始まりを知るのは、実はとても難しい問題です。
というのも石や骨などの硬い素材で作られた人工物とは違い、動物の毛皮や布などの柔らかい素材を使った衣服は土中ですぐに分解されて、長い時間を生き残ることが難しいからです。
つまり、原始人が実際に着ていた衣服を調べることはできません。
そこで人類が衣服を着始めた時期を知るには、クリエイティヴな問いの立て方をする必要があります。
そうして研究者たちが注目したのが「シラミ」でした。
シラミは動物の体に寄生する非常に小さな虫ですが、彼らの生態は驚くほど生息場所の環境に特化しています。
例えば、人に寄生するシラミは人にだけ、牛に寄生するシラミは牛にだけ寄生します。
それだけでなく、同じ人体の中でも頭に寄生するのは「アタマジラミ」で、陰部に寄生するのは「ケジラミ」と種が細かく分かれているのです。
そしてシラミの中には、衣服の中を主な生息地とする「コロモジラミ」という種がいます。
これを受けて米フロリダ大学(University of Florida)の生物学者であるデヴィッド・リード(David Reed)氏は、面白い問いを立てました。
ずばり、「他のシラミ集団からコロモジラミが進化した時期を特定すれば、人類が衣服を着始めた時期を間接的に解明できるのではないか」と。
リード氏は「コロモジラミは衣服に特化した種なので、人類が衣服を発明するまでは確実にコロモジラミは存在していませんでした」と話しています。
そこでリード氏らは、コロモジラミが出現した時期の特定を行いました。