『妖怪人間ベム』は、1960年代末に放送されていたテレビアニメ作品である。妖怪人間のベム、ベラ、ベロが作中で言うセリフ、「早く人間になりたい」は非常にインパクトが強く、また外見が醜い妖怪人間側が心優しく人間らしい一方で、人間側が心醜く描かれているという作風が特徴的であり、最高視聴率28%を超える当時としては異例の大ヒット作となった。
初期アニメにおいて、彼らは結局人間になることは叶わなかった。それどころか、火事に巻き込まれてそのまま行方不明になってしまうという悲劇的な結末を迎えている。ある意味では、生き残っていたという続編を期待させる展開であったが、1980年代初頭にアニメ・パート2が企画されるも頓挫してしまう。
月日は流れ、2000年代に入って以降はリメイク化、実写テレビドラマ化、実写映画化といった形で展開されるようになっていき、現在もなお語り継がれる名作として、その知名度は衰えるところを知らない。
本作は、高い知名度を誇っている作品の中でも、特に時代による制約をダイレクトに受けた作品であったと言えるだろう。
2017年、妖怪人間ベム50周年プロジェクトとして初期アニメ版が放送された。だが、カット音声、いわゆるピー音加工があまりにも多く、SNS上ではこのことが大きな話題となった。いわゆる、現代基準での放送禁止用語の自主規制による処置であったことは言うまでもない。作品の再放送においては通常、無音加工を施すことが普通であるのだが、このときはカット音声による対応がなされたという珍しい事例となった。
また、彼らは人間体の姿、妖怪人間での姿を問わず手の指が常時3本であったのだが、2006年の新作アニメでは人間体の際の指は5本となっている。2011年の実写ドラマ版では、妖怪人間の姿でも指の数が常時5本という形で変更がなされている。
さらに、話そのものが封印されたこともある。1968年10月28日に放送された第4話は、サブタイトルが「せむし男の人魂」であった。せむし男と言えば、古典作品「ノートルダムのせむし男」でご存じの方も多いだろうが、この作品がディズニーでアニメ化された時には、その邦題が「ノートルダムの鐘」に変更されたということも有名だ。
1992年に、レザーディスクが発売された際、この第4話のサブタイトルは単に「人魂」と変更された。それだけならまだしも、1996年に発売されたVHSビデオでは、第4話がまるまる未収録となっており、欠番となってしまった。「せむし男の人魂」というサブタイトルのまま収録を果たすのは、2010年以降DVDやブルーレイBOXとして発売されてからである。
妖怪人間ベムほど、自主規制に翻弄されたものもないだろう。先の50周年で放送された大量のピー音加工が施された事例については、そのあまりの修正量から面白おかしく捉える人も多かったが、その反面そうした対応をした公式に対し批判的な意見を向ける人も多かった。
実際、そのような発表の仕方では「妖怪人間ベム」という作品が、単に”現代では不適切な表現ばかりが登場するアニメ”というだけの代物になり下がってしまいかねず、カット音声の裏で何と言っていたか、今回は何回ピー音が入るのかといった触れられ方により、作品・内容の価値を貶めかねないのではないかの声もある。妖怪人間ベムが投げかける問いは、物語の内容から作品の性質に至るまで大きい。
文=黒蠍けいすけ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
提供元・TOCANA
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