2024年5月、ビルボードが興味深いレポートを発表した。それは『洋楽が聴かれなくなった? “JAPAN Hot 100”チャートイン楽曲の国別構成』だ。

 2017年以降の日本市場における楽曲の国別構成を分析したデータで、2017年と2023年の日本の音楽市場の総売り上げにおける楽曲の国別総合ポイントで比較すると、アメリカは8.11%から0.94%、イギリスは2.89%から0.61 %と激減。代わってJ-POPが77.46%から87.5%、K-POPが7.13%から10.5%へと大きく伸びている。ビルボードの総合ポイントはCD売り上げ枚数やストリーミング回数、ダウンロード回数、カラオケ歌唱回数などのデータで算出している。 

 このデータを見ていると、J-POPとK-POPの国内人気が拡大していく将来が想像できる。

 FMラジオ専門誌『FMステーション』が大人気だった80〜90年代のTVやラジオ、雑誌では、いわゆる洋楽アーティストが頻繁に取り上げられていた。マドンナ、マイケル・ジャクソン、ワム!などは誰もが知る存在だった。オリコンの国内年間アルバムチャートを見ると1984年にはマイケル・ジャクソンの『スリラー』が3位、85年はワム!の『メイク・イット・ビッグ』が2位に入っている。当時はTV番組『ベストヒットUSA』 の人気もあり、海外アーティスの楽曲が身近にあった。

 ところが現在は、ビルボードの報告を裏付けるように海外で大人気のティラー・スウィフトのシングル『Anti-Hero 』(米国で2022〜23年連続1位)でさえも、日本では最高34位だった。

 なぜ“洋楽離れ”とまで指摘される現象が起きているのだろうか。そしてJ-POP、K-POPのシェア率が増えてきている背景には何があるのだろうか。

J-POP、K-POPのクオリティがレベルアップ

 現在、国内のアーティストが取り組む音楽ジャンルは多彩で、なおかつクオリティが高い。ロック、ポップス、ガールズグループ、ボーイズグループ、ダンスユニット……いずれも充実した新作のリリースが続き、旧譜のリマスタリングなども盛んに行われている。  

 ストリーミングやダウンロードを通じて作品を購入している若い世代にとっては、国内アーティストの活動をフォローするだけで十分満足できていると考えられる。それが洋楽縮小の一因ではないか。

 中でもJ-POPはオリジナリティが評価されるとともに、アニメを通じて海外にも浸透している。アニメ作品がミュージシャン側と一体になって、プロモーションを行い、作品世界の浸透に努力している。アニメのヒットと楽曲のヒットがシンクロしているのである。マイケル・ジャクソンの『スリラー』と、そのミュージックビデオ、そこで披露されるダンスが一体となって人気を高めた歴史が甦る。

国内洋楽シェアの低迷から浮かび上がるJ-POP、K-POP人気の世界進出の流れ
K-POPのIVE(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 K-POPは世界的に評価が高い。その背景にはK-POPは最初から世界市場を意識した作品作りと、パフォーマンス披露に取り組んでいる。その結果、グローバル化に成功した。日本にもK-POPのファンが多いのは、日本語でコミュニケーションを図るアーティスト側の努力も大きいといえる。

アジア諸国ではK-POP の次に来る音楽として J-POPが人気になっている

 現在、日本だけでなく、韓国や中国、台湾、タイなどのアジア諸国においても英米系の作品離れは進んでいる。一方で日本同様、J-POPやK-POPの人気が上昇中だ。

 最近は、とくにJ-POPの飛躍がめざましい。以前から、J-POPアーティストがアジア諸国でライブを行う機会があったが、それは一部の現地ファンや日本からのファンツアーを対象とした小規模のイベントだった。ところが現在は違う。アリーナクラスを現地のファンで満員にしている。

国内洋楽シェアの低迷から浮かび上がるJ-POP、K-POP人気の世界進出の流れ
King Gnu(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 たとえばKing Gnuの2024年アジアツアーは、台北/シンガポール/上海など4都市7公演がすべてソールドアウトした。YOASOBIが12月から行うアジア・アリーナツアーは、各地でチケット争奪戦が起き、香港公演は1秒で売り切れている。

 海外ツアーに参加できなかったファンは、後日提供されるライブ映像・音楽作品を購入するだろう。ライブに参加した海外のファンも同様で、日本のアーティストが海外進出する際の強力なサポーターになってくれるはずだ。

 海外でライブを披露した日本のアーティストは、今後ますます人気を高めるだろう。日本の音楽シーンは、海外マーケットを積極的に取り込む段階に入ったようだ。洋楽が衰退しているのではなく、国内作品が成長しているのである。

国内洋楽シェアの低迷から浮かび上がるJ-POP、K-POP人気の世界進出の流れ
YOASOBI(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

INFORMATION

IVE 2nd EP

『ALIVE』

国内洋楽シェアの低迷から浮かび上がるJ-POP、K-POP人気の世界進出の流れ
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

リリース中
仕様・価格:初回生産限定盤A (CD+Blu-ray)3,100円/初回生産限定盤B (CD+PHOTOBOOK)3,100円/通常盤 (CD only)1,700円

YOASOBI  24 thシングル

『舞台に立って』

国内洋楽シェアの低迷から浮かび上がるJ-POP、K-POP人気の世界進出の流れ
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

配信リリース中

King Gnu 映像作品

『King Gnu Dome Tour THE GREATEST UNKNOWN at TOKYO DOME』

国内洋楽シェアの低迷から浮かび上がるJ-POP、K-POP人気の世界進出の流れ
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

リリース中
仕様・価格:完全生産限定盤12000円/通常盤 7700円

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提供元・CAR and DRIVER

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