ファーウェイ問題の余波を受けたボーダフォン
ボーダフォンは2019年以後、5Gへの取り組みに注力。先にも述べた通り、たとえばドイツで5Gのオークションに参加し、落札もしています。
一方、ボーダフォンの5G展開には問題も発生していました。最大の困難は、5G機器として中国の通信機器大手ファーウェイ製品を採用していましたが、2021年にイギリス政府が通信網にファーウェイ製品を使用することを禁止したこと。この決定に対し、ボーダフォン側はファーウェイ製品の除去に約2億ユーロかかると発表。
3G停波と5G展開向けに展開していたファーウェイ製品の除去による、5G展開の遅れという2つが重なっており、ここ数年はボーダフォンにとって「大変な時期」であったことは間違いないでしょう。
スペイン事業やイタリア事業をすでに売却済み
先にも述べた通り、ボーダフォンは欧州でのシェアが大きな通信企業。しかし欧州圏内の一つひとつの国の人口は決して多くはなく、経済規模が大きな国もある程度限られている一方で、3G停波と5G展開には膨大なコストを要します。また通信会社の数自体も増加しています。つまり「契約者数の母数と伸びしろ」の面で難しい局面にある一方で、本格的な5G展開の初期投資が大きく、欧州はいわば「通信会社の過当競争」に陥っています。
ボーダフォンも競争に巻き込まれているのは間違いなく、事業の再編を進めています。2023年10月には、スペイン事業をイギリスの投資会社Zegonaに売却する契約を締結。さらに、2024年3月にはイタリア事業をスイスの通信会社Swisscomに80億ユーロで売却することを発表しています。これらの動きは、ボーダフォンが収益性の低い市場から撤退し、より成長が見込める市場に注力する戦略の一環と言えます。
英国内でも競合他社の経営統合計画を実施
イギリスでは国内シェア3位だったボーダフォンですが、2023年にシェア4位のスリーUKとの統合を発表。これにより、顧客数は2800万件となり、イギリス国内で最大手となる見込みです。このような事業再編を通じて、欧州での競争力強化を進めていると言えるでしょう。
日本企業と組んで、アフリカ事業への注力度を高める
欧州市場での競争が激化する中、ボーダフォンは実は「日本企業」と改めてタッグを組み直し、今度はアフリカ市場への注力を強めています。
2023年には住友商事と提携したボーダフォンは、ケニアでスタートアップ企業の支援事業を開始。有望企業の早期発掘をアフリカで手がける通信事業との連携に繋げるプロジェクトです。ボーダフォンはアフリカに「新たな成長分野や市場」を求めていると言えるのではないでしょうか。
つまり日本事業売却後のボーダフォンは、欧州で一定のシェアを保ち続けてはいたものの、3G停波や5G展開、欧州の過当競争の中で近年は苦戦傾向。その中で新たに「アフリカ市場」に展開し、日本企業とも再度タッグを組み直していると言えます。
※サムネイル画像(Image:Tupungato / Shutterstock.com)
文・オトナライフ編集部/提供元・オトナライフ
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