「自宅にテレビを置いていない」「自宅のテレビをチューナーレステレビに買い替えた」という方もいらっしゃるでしょう。また、消費者が接するメディアの中心が「テレビ」から「インターネット」へシフトしていると感じている方も少なくないかもしれません。
とはいえ、テレビ離れが全国的に「多数派」なのかどうかは、断言しづらい部分もあります。そこで今回は、「テレビ離れが本当に進んでいるのか」を、テレビの所有率や広告費の動向から検証していきます。
男性若年層の単身層のテレビ所有率は「6割」
まず「テレビ所有率」に関しては「男性若年層での低下」が著しいです。
民放連研究所が2023年3月に実施した調査によると、男性若年層(10代、20代、30代)の単身世帯では、テレビの所有率はどの年代も60%程度です。これは、2人以上の世帯や他の年齢層と比較して明らかに低い数字です。
つまり少なくとも民放連研究所の調査に基づく限り、テレビ離れは「単身層の男性」で急速に進んでいると言えそうです。ちなみに女性の単身者のテレビ所有率は70~80%程度であり、男性単身者ほどには急速なテレビ離れは進んでいません。
なお同調査ではAmazonプライム・ビデオ、Netflix、ディズニープラス(Disney+)の契約率が上がっていることも判明しており、単身層の男性の視聴は一定数、こうしたストリーミングサービスに流れている可能性があります。
10代・20代のネット利用時間は「テレビ視聴時間」と2019年時点で逆転済み
なお10代・20代における「テレビ視聴時間」は、すでに「ネット利用時間」と逆転しており、顕著に下降傾向にあることが令和元年の情報通信白書(総務省作成)で指摘されています。
総務省が令和元年に発表した「情報通信白書」によると、10代と20代のテレビ視聴時間は2000年と比べて2015年は右肩下がりに推移。10代・20代ともに1日あたりの視聴時間は120分を切っており、特に10代では60分強程度です。
ちなみに同調査で50代が180分以上、60代が240分以上視聴しており、なおかつグラフは2000年以来横ばいに近しいです。つまり「視聴時間が長く、なおかつテレビ離れも進んでいない」と言えます。
なお同調査のインターネット利用時間推移を見てみると、全体的に上昇傾向にあります。特に20代を見てみると2000年は1日30分以下だったにも関わらず、2015年には1日150分程度まで増加。つまり、若者層ではテレビとインターネットの利用時間の長さはすでに逆転していると言えます。
2021年にインターネット広告費はマスコミ4媒体を逆転済み
若者の視聴動向の変化などに伴い、企業が出稿する「広告」の動向も変化が強まっています。たとえば2021年には、インターネット広告費がテレビ、新聞、雑誌、ラジオを合わせたマスコミ4媒体の広告費を上回りました(電通調査・2021年時点)。
2021年のインターネット広告費は、インターネット広告費が2兆7,052億円(前年比21.4%増)。テレビを含むマスコミ4媒体の広告費が2兆4,538億円(前年比8.9%増)。インターネット広告費がマスコミ4媒体を大きく上回る傾向は、2021年以降、加速度的に強まっています。
2023年時点ではインターネット広告費は3兆3330億円と過去最高を記録し、日本の総国費の45.5%を占める規模まで拡大。一方でマスコミ4媒体の広告費は2兆3161億円に留まっており、先のご紹介した2021年時点のデータと比較して微減傾向が続いています。