国営放送であるNHK。国営放送自体は各国にありますが、はたして義務となっている「受信料」は他国にも同じようにあるのでしょうか。
日本のNHK受信料は、地上波のみの視聴で年間約12,276円であり、受信機を設置しているかどうかに基づいて徴収されます。つまり「自宅にテレビがない場合」や「自宅のテレビがチューナーレステレビの場合」はNHK受信料の支払い義務はありません。しかし、NHKのネット配信業務の必須化に伴い「スマホユーザー」が今後、NHK受信料の支払い対象になる可能性も浮上しています。
すると気になるのは、海外でも「国営放送の受信料をスマホやPCからも徴収するのは普通なのか?」ではないでしょうか。今回は国営放送の受信料について、他国の事情を交えつつ解説します。
そもそも「国営放送の受信料」は海外ではどのように集められている?
海外の国営放送では、日本のNHKのように受信料を徴収している国もありますが、その方法は国によって様々です。一方で、受信料制度を廃止したり、見直しを行っている国もあります。ここでは、フランス、ドイツ、韓国の事例を見ていきましょう。
【フランスの場合】年間138ユーロの公共放送負担税を廃止済み
フランスの公共放送では「公共放送負担税」として年間138ユーロ(約17,920円)を徴収し、全世帯に対して一律に課していました。つまりフランスでは国営放送の受信料は「税金の一種」ということです。
しかし2022年にこの公共放送負担税は廃止。2024年まで暫定的に付加価値税から財源が拠出されている状態です。マクロン大統領が、市民の購買力維持に対する政策して掲げた「公共放送負担税廃止」を実現した形となりますが、フランスの公共放送自体の廃止は予定されておらず、代替の財源の模索が続けられているのが現状です。
【ドイツの場合】全世帯一律(住居ごと):年間約192ユーロ
ドイツでは、テレビやラジオの所有の有無にかかわらず、全世帯から一律で徴収する「放送負担金」制度を導入しています。料金は月額17.5ユーロ(約2,809円程度)。年間では210ユーロ(約33,708円)となります。
一方、ドイツで波紋を広げたのが「PC受信料」。これは受信料の基本料金やテレビ料金を支払っていない場合、パソコンやスマホの所有者から月額5.52ユーロを徴収するというもの。しかし、ネット接続のみを可能とするパソコンを所持する学生が「受信料支払い請求は無効」と主張して裁判を起こし、ミュンスター行政裁判所はその主張を認める判決を下しました。
こうした議論を経たことで、ドイツでは受信機の種類や有無を問わず「住居」を対象に徴収する方針が定着しています。
【韓国の場合】電気料金とセットで徴収する方針を見直しへ
韓国では、公共放送KBSの受信料を電気料金と一緒に徴収する方式を採用していましたが、2023年7月に分離徴収への移行を決定。月額2,500ウォン(約275円)の受信料は1981年以降据え置かれており、KBSは値上げを要求していましたが、国民側は反発。分離徴収の決定により値上げ議論は立ち消えとなりました。「電気料金とのセットでの徴収」という慣習が見直されたばかり、というのが2024年現在の状況です。