企業年金等の機関投資家は、大きな社会的責任を負っているので、運用成果については、常に、説明責任を果たすことが求められる。
そこで、機関投資家の資産配分において、例えば、20%が日本株に配分され、その全てがインデクス運用であるとして、日本株のベンチマークの収益率がマイナス10%であるときは、その他の要因にして変化なければ、資産全体の収益率はマイナス2%になるが、表層的な説明責任のもとでは、このマイナス2%は、客観的な事実で説明されるので問題はないことになる。
実は、マイナス2%は、ベンチマークの収益率がマイナス10%だけでは説明され得ず、当然のことながら、より重要なのは、日本株のインデクス運用に対する20%の資産配分についての説明なのである。つまり、資産配分は、運用基本方針として、長期的に変えない前提で、策定されているわけだが、説明の本来の対象は、運用基本方針の妥当性なのである。
評価とは、実行可能なことに対して、現に実行していることの効果の測定である。現に実行している資産配分の効果は複合ベンチマークによって測定される。そこで、投資可能な全ての対象についてベンチマークを定義し、全ベンチマーク収益率について時価加重平均値をとって、資本市場ベンチマークと名付ければ、それが複合ベンチマークを評価するベンチマークになる。
しかし、実行可能なこと自体、投資の能力によって規定されるから、その能力を測定するベンチマークが必要であろう。機関投資家の資産管理責任者について、能力のベンチマークを定めるとしたら、その地位に就くのに相応しいものとして、社会的に要求される良識と専門的知見を備えた人がもつ平均的能力になるわけだ。
■
森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行