土星と他の巨大惑星で環の組成が異なる理由は現在のところ解明されていませんが、興味深い仮説があります。惑星の密度の違いが環の成分の違いに関係しているというのです。
この説では、約40億年前の太陽系の後期重爆撃期に巨大惑星の環が形成されたとしています。
環の材料となったのは、カイパーベルト(太陽系の惑星たちより外側の軌道にある小天体が集まった領域)にある冥王星サイズの巨大な天体だったと考えら得ています。これが土星や天王星、海王星に接近した際、潮汐力によって破壊され、その一部がこれらの惑星に捕獲され、それが現在の環になったのです。
この際、惑星の密度の違いが環の組成を決定したと推測されています。
天王星や海王星は土星と比べて密度が大きいため、惑星の非常に近くを天体が通過する近接遭遇が可能です。この場合は天体には大きな潮汐力が作用します。
一方、土星の場合は密度が小さく質量に対して惑星半径が大きいため、そのようなごく近傍を通過しようとすると土星本体に衝突してしまうのです。
惑星近傍を通過するカイパーベルト天体は内側に岩石核、外側に氷マントルという二層構造をもっていたと想定できます。この場合、天王星や海王星の場合では、岩石核まで破壊・捕獲され、岩石成分も含むリングが形成されます。
これに対して土星の場合は通過する天体の氷マントルのみが破壊されるため、氷が主成分のリングができるのです。
木星についても、土星と比べて密度が大きいためこの説が適用できますが、ガリレオ衛星の影響も考えられます。
木星には大きな4つの衛星(ガリレオ衛星)がありますが、これらの重力によって環の材料となる氷の軌道が変化し、環の形成が妨げられた可能性があります。一方、土星の衛星は木星ほど大きくないため、環の形成に与える影響は小さかったと考えられます。
また土星の環が明るくくっきりと見える理由については、土星の環が比較的最近できたものだという説があります。