移民排斥や反イスラム教という考え方は、極右思想を持つ人だけではなく、国民の中で共有されている部分があるので、「こんな暴動が起きるのも、無理はない」と書くジャーナリスト、メディア、専門家が必ず出る。
つまり、言い訳がきかない暴力行為(店舗からの物品の略奪)に、一定の言い訳、正当に思えてしまうような理由を提供してしまうのである。
「ちょっとした見物気分」で参加し、混乱に乗じて投石したり、物を盗んだりした人が大勢いたことも事実だろう。
8月8日、暴動初日(7月30日、火曜日)にサウスポートでのデモに参加した男性の裁判があった。紹介された動画の中で、この男性は警察の車の一部をはぎ取り、警察官に向かって放っていた。その様子を見て、周囲にいたデモ参加者が歓声を送っていた。
裁判官はこう言った。集まった人々は「まるで、火曜日の夜の娯楽でも見るかのようだった」、「恥を知りなさい」。
今後の展開8日朝現在、暴動は一定の鎮静化の兆候を見せている。
9月になれば、学校も始まるし、落ち着いてくるだろう。
でも、政治家も、メディアも専門家も、「あの暴動には一定の理由があった」として、社会問題として話題にしていくことだろう。極右組織のプレステージ(名声)度はちょっとあがったのである。
これでいいのか?と思う。
店舗を壊された人、宿泊先を攻撃された人、通りで排他的な言葉を投げつけられた人の怒りや恐怖感は直ぐには消えないのだ。
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編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2024年8月9日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。