レースで勝てるエボリューションモデルという前提
初代スカイラインGT-Rが、それ以前の日本車と大きく異なったのは、「レースで勝つためのエボリューションモデルを前提に、一般大衆向け乗用車を開発した」ということでしょう。
もちろん前作S54系スカイラインGTも、S50系スカイラインをベースにしたものですが、もともと直列4気筒エンジンを積むクルマへ強引に6気筒を積んだ「スカG」は、シングルキャブのダウングレード版GT-Aを含め、「一般向け大衆車」とは言い難いものでした。
しかし日産と合併後に初のモデルチェンジとなった3代目C10系では、最初から日産系の直列6気筒エンジン「L20」を積んだロングノーズ版を、セドリック/グロリアとブルーバードの中間的なアッパーミドル級セダンの「GT」として設定しています。
つまりGT-Rがなくとも「スカG」は成立していましたが、搭載するL20は吸排気レイアウトが同一方向へ行ったりきたりで性能アップの限界が低いターンフロー型であり、プリンス系のG7と変わりません(同じメルセデス・ベンツ系エンジンを参考にしているので当然)。
ただ、代わりに積む高性能エンジン(S20の元になったGR8)のアテはあり、それを積んだ市販車を発売するのも、スカイラインGTがベースなら容易です。
具体的にどの段階からかは筆者の知識不足もあって定かではありませんが、最初から直列6気筒エンジンを積むC10系スカイラインGTは、「レースで勝つためのエボリューションモデル(GT-R)を前提に開発した、初の日本車」と言えるでしょう。
それまでも一般向け市販車でツインキャブを実装した高性能版や、レースを視野に入れたスポーツカーはあったものの、C10系スカイラインGTほど「最低限の仕様変更で高性能モデルを実現可能なように開発された市販車」ではありませんでした。