国際社会で安定的な存在感を確保しながら、自国の利益を追求する足場も固めるために、日本政府は国連などの国際機関における日本人職員の数を増やすように努力してきている。その成果から、国際機関における日本人職員数は史上最高の状態となっている。2022年末で961名である。

ただし今後も国際機関で日本人職員に活躍してもらうためには、低下の一途の国家としての日本の影響力に期待し続けるだけでは、無理だ。

私は、2007年度から今年の3月までの17年間にわたって、外務省委託契約を受けて一般社団法人広島平和構築人材育成センター(HPC)代表として「平和構築・開発のためのグローバル人材育成事業」という事業の責任者を務めた。平和構築を中心とする国際協力の分野で日本人の人材を育成するという課題に対応するため、各種研修やキャリア構築支援を行う事業であった。

私は「平和構築」という自分が専門とする領域への思い入れから事業運営に関わり始めたのだが、外務省は国際機関における日本人職員数を増やす、という目標の達成を至上命題にしていたので、非常にきつい業務であった。

結果として、統計対象とした15年間で、毎年10数名の日本人を採用していた中核コース参加者の約半数の113名が、国連職員として活躍している。

ある一つの事業の修了生が、上記の国際機関日本人職員の全体数の中でかなりの割合を占めているということは、それなりに大きな事実である。ある国連職員に、奇跡的な成果だ、と言ってもらったこともある。