1月10日の飛行機で羽田に飛んだが、フランクフルトで搭乗すると、機内はガラガラだった。最近はエコノミーからビジネスまで満席のことが多いので、何が起こったのかとビックリしてCAに尋ねた。「今日のお客さん、これだけですか?」
すると、「電車のストで空港に来られなかった人が大勢いらしたようです」という答えだったので、もう一度ビックリ。飛行機に乗れないストレスというのは経験済みだが、精神衛生に極めて悪い。私は、見知らぬ多くの不幸な人々に、心から同情した。
ドイツ鉄道運転士組合「GDL」のストライキと交通の混乱ドイツ鉄道はストばかりしている。正確にいうと、ドイツ鉄道の運転士の組合であるGDLのストだ。ドイツ鉄道自体は33万4000人もの従業員を抱えるドイツ有数の巨大な私企業だが(株主は100%ドイツ政府)、GDLの組合員は、そのうちのわずか4万人ほど。しかし、彼らがいないと電車が走らないため、一番強い組合でもある。クラウス・ヴェゼルスキーという凄腕の代表が、ストのたびに多くの国民に憎まれながらも、どこ吹く風で、すでに15年もGDLを仕切っている。
GDLが昨年から要求しているのは、555ユーロの賃上げ、諸手当の25%の引き上げ、インフレに対する補助として3000ユーロの支給等々、その他にもたくさんあるが、極め付きは、週の労働時間を38時間から35時間に短縮すること。
昨年12月7日、8日、GDLはこれらの要求を掲げて「警告スト」を打った。警告ストというのは、「我々の満足のいく回答がなければ、どうなるかわかっているな」という、いわば脅しだ。
ただ、雇用者側としては、賃上げはともかく、いくら脅されても、同じ給料で労働時間を週に3時間も短縮という要求は飲むことができず、GDLは1月のストを宣言。1月9日より貨物、10日より旅客でストが始まり、12日までダイヤはほぼ壊滅した。
ところが8日からは、千人もの農民もトラクターを繰り出し、1週間の予定で、政府の農業政策に抗議する大型デモを実施していたため、この時は、アウトーバーンの交通状況まで大いに乱れた。結局、多くの人がそれに巻き込まれ、電車もダメ、車もダメとなり、飛行機にも乗り遅れたということらしかった。
ドイツから日本への直行便は、主に、フランクフルトとミュンヘンから出ているが、以前は各地から両飛行場へ国内線で移動することができた。ところがここ数年、ドイツは国内線を減らしており、とかく不便。その(公式の)理由は、政府の方針、「近距離飛行でCO2を撒き散らすのはけしからん、電車で行け」のためで、航空会社が好んで減らしているせいではないらしい。