熱波からレッドハンドフィッシュを守れ!

IMASのチームは今年1月(※)、オーストラリアに到来した海洋熱波により種が全滅してしまうことを恐れて、既知の野生個体100匹のうち25匹を捕獲し、数カ月間だけ飼育下に移動させる試みを行いました。

(※ 南半球にあるオーストラリアは日本と季節が逆であり、12〜2月が夏で、6〜8月が冬になる)

慣れ親しんだ生息地から引き離すことにはリスクもありましたが、熟練した飼育者たちのおかげで、スムーズに新しい家に馴染ませることができました。

海洋熱波から守るためにれッドハンドフィッシュを一時的に保護
海洋熱波から守るためにれッドハンドフィッシュを一時的に保護 / Credit: IMAS – BACK TO THE WILD: RESCUED RED HANDFISH RETURNED TO THE SEA

トロッター氏は「移動させたレッドハンドフィッシュたちはその日のうちに餌もよく食べていました」と話しています。

また経験豊富なスタッフたちが週7日で魚の世話をし、何かあったときのために24時間体制で対応できるようにもしていたといいます。

それと並行して、チームは野生の生息地の回復にも着手しました。

具体的には、レッドハンドフィッシュの生息地に必要な海草を食べすぎている在来のウニを除去する取り組みを行っています。

海草を食べすぎるウニを除去
海草を食べすぎるウニを除去 / Credit: IMAS – BACK TO THE WILD: RESCUED RED HANDFISH RETURNED TO THE SEA

そうして数カ月の期間後、捕獲した25匹のうち18匹を無事に海へと帰すことに成功しました。

残念ながら、3匹のレッドハンドフィッシュは期間中に亡くなっています。

残りの4匹は種全体の保護活動に役立てるため、引き続き飼育下での繁殖プログラムに参加させているとのことです。

レッドハンドフィッシュ
レッドハンドフィッシュ / Credit: IMAS – BACK TO THE WILD: RESCUED RED HANDFISH RETURNED TO THE SEA

レッドハンドフィッシュたちはタスマニア沖の非常に狭い範囲に集中して生きているため、この海域の環境が土地開発や温暖化などによって急変すると、種が簡単に全滅してしまう恐れがあります。

研究チームは今後も、生息地の管理と回復を含めて、レッドハンドフィッシュを守る活動を続けていくとのこと。

この愛らしい魚たちが地球から消えてしまわないよう祈るばかりです。

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参考文献

Red handfish: A tiny, moody fish with hands for fins and an extravagant mohawk
https://www.livescience.com/animals/red-handfish-probably-in-the-rarest-handful-of-fish-in-the-world

BACK TO THE WILD: RESCUED RED HANDFISH RETURNED TO THE SEA
https://www.imas.utas.edu.au/news/news-items/back-to-the-wild-rescued-red-handfish-returned-to-the-sea

SCIENTISTS RESCUE RED HANDFISH IN HOT WATER THIS SUMMER
https://imas.utas.edu.au/news/news-items/scientists-rescue-red-handfish-in-hot-water-this-summer

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部