土星の衛星「タイタン」は、太陽系内では地球を除いて唯一、安定した液体の海をもつ天体です。
タイタンの海は地球のような水ではなく、液体化したメタンですが、それでも専門家たちは「独自の生命体がいるのではないか」として大いに注目してきました。
そんな中、10年ほど前にメタンの海で不思議な島が見つかります。
この島は現れたと思ったら、いつの間にか消えてしまう特性から「魔法の島(magic islands)」と呼ばれています。
これまで島の正体は謎に包まれていましたが、今回、米テキサス大学サンアントニオ校(UTSA)の研究により、タイタン上空で固まった有機物質が落ちて浮遊したものである可能性が示されました。
研究の詳細は2024年1月4日付で科学雑誌『Geophysical Research Letters』に掲載されています。
メタンの海に「魔法の島」を発見!
タイタンは太陽系内で唯一、濃い大気をもっている衛星であり、その大気は地球より50%も厚いことが分かっています。
大気の大部分は窒素が占めていますが、他にメタンやエタン、水素、二酸化炭素などを含み、ぼんやりとしたオレンジ色の空気を呈しています。
またタイタン表面には、液体化したメタンとエタンの海が存在します。
こうした環境ゆえに何らかの生命体の発見が期待されており、数十年前から調査が進められてきました。
そして2014年に土星探査機・カッシーニによって初めて、メタンの海に「魔法の島」が発見されました。
カッシーニは1997年10月に打ち上げられ、およそ35億キロの長旅を経て、2004年7月に土星軌道に入ります。
2017年9月の運用終了までに土星を計290回も周回し、さらにはタイタンを含む衛星の観測を行っていました。
カッシーニが記録したレーダー画像によると、タイタン北極にある「リゲイア海(Ligeia Mare)」にて、それまで何もなかったところに突然、島のような物体が浮き上がっていたという。
さらに奇妙なことに、この島の形状は数時間から数週間以上にわたって変化しており、数年後には姿を消していたのです。
これ以来、研究チームは「魔法の島」の正体が何であるかを解明しようと試みてきました。