全国民がコロナに感染した?

だがこの仮説には難点がある。2022年の超過死亡数は12万人だが、コロナ死者数は4.8万人。この差の7.2万人がすべてコロナに感染したのに検査陽性にならなかったとは考えにくい。

これについての仁井田氏の説明はこうである:コロナ感染を引き金にして容態の悪化した高齢者が死亡するまでにウイルスが消えた。ウイルスが消えるまでに平均11日かかるが、死亡するまでに平均25日かかるので、死亡したときのPCR検査では陰性と判定される。実際の感染者は3倍以上いたと推定できる。

もう一つの難点は、オミクロン株の致死率は約0.1%だったので、12万人が死亡したということは、その1000倍の1億2000万人、つまりすべての日本人がコロナに感染したと考える必要があることだ。

これは日本の累計感染者数が30万人、欧州でも感染率が人口の半分程度であることを考えると無理があるが、オミクロンでは無症状の超軽症の風邪が多かったので、PCR検査では検出できなかったのかもしれない。また高齢者の致死率が高い(たとえば1%)とすると、隠れコロナ感染者は1000万人程度になる。

行動制限と過剰医療が隠れコロナ死者を増やした

隠れコロナ死者の中身としては、コロナ感染を引き金にして老衰の患者が亡くなるというケースが多い。また自宅で容態が急変して救急搬送が間に合わなかったというケースも多い。長期にわたる行動制限で体力が低下するフレイルの影響もあったと思われる。

世界の超過死亡率(黒の折れ線)を見ると、先進国ではコロナ死亡率(赤の折れ線)との差が小さいが、途上国では大きい。これはPCR検査をやっていない国が多いためだろう。日本は検査はかなりやったが、オミクロンでは感染爆発が起こったので、検査が追いつかなかった。

 

ワクチン接種による死者は、厚労省の発表では37人。もちろんこれは政府の認めた最小限の数字だが、4年間で累計21万人の超過死亡を説明するのはむずかしい。

今後、検証が必要なのは、先進国でロックダウンなどの厳戒態勢をやめた後も1年以上、2類相当の過剰医療を続けた厚労省の対応である。これによって高齢者の救命措置ができなくなり、超過死亡が増えたことも考えられる。

これは荒っぽい仮説に過ぎない。ご意見はアゴラサロンにどうぞ(初月無料)。