かまいたちは、つむじ風に乗って来て人間を斬りつけると言われる妖怪、魔獣である。外で出歩いている際に、いつの間にやら刃物で切りつけたような痕が付いている時は、かまいたちの仕業であると言われ、日本各地に伝承が残っている。漢字表記では「鎌鼬」「構太刀」「窮奇」など様々である。
全国各地に伝わる中でも特に雪国に多いと言われている。一般的には三役がいるとされ、一匹目が人を倒し、二匹目が斬りつけ、三匹目が薬を塗るという役割を持っているという。最後に薬を塗るのは、それによって斬りつけられたことに気付かれないためであるようだ。この三役としてのかまいたちは、主に美濃・飛騨に伝わるものであると言われる。
だが、かまいたちの伝承すべてがこのように三役の存在として描かれているわけではない。江戸後期の随筆作家である三好想山(しょうざん)が様々な怪談奇談を集めた主著『想山著聞奇集』(1850)の中に記されたかまいたちの説明では、はじめは痛みも出血もないが徐々に激痛となっていき、時には骨が見えたり死に至る場合があったりというケースもあったという。下半身のキズが多いことから、かまいたちは一尺しか飛び跳ねることができないのかもしれないとも記しており、三役についての記述は見られない。
愛知県東部に伝わるものとしては、人の生き血を吸うために斬りつけると言われている。当地では「飯綱」(いづな)とも呼ばれ、かつて飯綱使いが弟子に飯綱の封じ方を伝授しなかったために逃げ出し、悪さをすると伝わっているという。
「鼬」と表記されることが多いために、その正体を含めイタチとして語られることも多く見られるが、例えば越後の文人である橘崑崙の著書『北越奇談』によれば、鬼神の刃に当たったことがキズのつく原因であるとの説明がなされているということもから「構太刀」と表記され、その正体もイタチという訳ではない。
かまいたちの対処法というものも伝わっており、呪文を唱えるというもののほか、古い暦を黒焼きにして油と混ぜて膏薬にして傷口に塗るという方法が東北に伝わるという。一方で暦とかまいたちが関連し合う例に、新潟県西頚城(にくしびき)郡や長野県北安曇(きたあずみ)市では、暦を踏むとかまいたちにあうというものがあるという。
かまいたちの出現は、山間部に多いとされている。先の美濃・飛騨も山間部であるが、新潟県にかまいたちの伝承が残る黒坂という地は、弥彦山(みひこやま)と国上山(くがみやま)の間であるためまさしく山間部である。こうした山間の地形に吹く特殊な風が、かまいたち”現象”を引き起こしていると考えられてきた。そうした中で、かまいたちの正体として長らく有力とされてきたのが真空説である。
真空説とは、空中に突如として真空ができるという説の下で唱えられたものであり、つむじ風の中心は真空状態であり、そこが人体・皮膚に触れることで傷がつくというものた。この真空説は、これまで長きに渡り有力とされていた説でもあるが、近年この説は不可能であると見なされている。つむじ風による気圧差は一瞬で無くなってしまい、また人体以外のものにつむじ風で傷ができたという事例が見られないことが、この説を揺らがせた大きな決め手となったようだ。現在では、雪国や気温が低くなる地域で起こるとも言われていることから、あかぎれの一種ではないかとする説が有力となっているようである。
その他にも、風で巻き上がった木の葉や小石が皮膚を斬りけてキズをつける現象がかまいたちであるという説もあり、一様とはなっていない。おそらく、これらの原因によってキズのついた現象が総じてかまいたちという名で呼ばれたものであると考えられている。
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文=黒蠍けいすけ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
提供元・TOCANA
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