道路脇に捨て置かれていたビデオテープを拾った親子が家に帰ってビデオを再生してみると、そこには家屋が激しく燃える凄惨な火事現場の様子が写っていた――。
■放火犯が撮影した火災現場ビデオ
1989年8月、米カリフォルニア州ストックトン近郊で、車で移動中の父親と息子が道路脇で何かが包まれている軍用ジャケットを発見した。
ジャケットに包まれていたのは、乳棒と乳鉢、ハーブ、人間の頭蓋骨の模型と、1巻のVHSビデオテープであった。親子はこのビデオテープを回収し帰宅後に再生してみたところ、その内容にショックを受けた。火災現場の様子を写した映像には、放火犯と思われる撮影者の不気味な声も録音されていたのだ。
撮影者はたとえば次のような言葉を口ずさんでいる。
「私が破壊し、あなたの魂を燃やす火、古代の悪霊よ」
「これが、あなたの1週間の休暇中に私がやっていたことだ。やると言ったんだ! やると言ったんだ!」
ある場面では、撮影者は火事に焦点を合わせながら「これをよく見れば、私が火事を起こせないと言わせない」とつぶやいている。
一方、別の場面では、彼はビデオを見る者に訴えかけているように「この火事を見てください。美しいでしょう。見てください。皆さん、私が何ができるかわかりますか。私が何ができるかわかりますか」と陶酔気味に語っている。
サイレンが鳴る中、彼は「消防が消火に努めています。笑えます」と嘲笑する。愉快犯であることは明らかだ。
親子はこの物騒過ぎるテープをテレビ番組「Unsolved Mysteries(未解決ミステリー)」に提供すると、さっそく番組が作られて1990年に放送された。
放送は大きな反響を呼び、警察が本格的に動くことにもなり、地元の人々からのいくつかの重要な情報提供が届けられた。
テープに映っているのは1988年にカリフォルニア州ストックトンで起きた火災現場であることが特定され、情報提供に基づく警察の捜査の末、17歳と19歳の少年が放火の容疑で逮捕された。犯行当時は未成年だったため、名前は公表されていない。最終的に19歳の男は放火とビデオ撮影を認めた。彼は精神に問題を抱えており、放火は愉快犯であったとされている。
現在ではVHSのビデオデッキを持っている人は少ないと思われるが、今であれば落ちていたUSBやマイクロSDなどを不用意に拾って再生すべきではないのだろう。
文=仲田しんじ
提供元・TOCANA
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