仕事帰りにも手ぶらで立ち寄れる都市型サーキット

【モータースポーツ特集】都内で気軽にEVカートを走らせる
(画像=シティサーキット東京ベイは都内23区にある唯一の本格カートコース。このコースはJAFの認定を受けており、国内のカートEVシリーズの開催サーキットにもなっている。トムスがプロデュースするレンタル用EVカート“EV KS-22”は、フレームはイタリアのビレル社製が専用開発した最高出力5kWを誇るパワーユニットを搭載。最高速度は70㎞/hを誇るが、施設では最高速度50㎞/hに制限し運用している。気になるバッテリーの容量は、30分の連続走行が可能で、200Vで30分充電すればほぼ満充電できるという、『CAR and DRIVER』より引用)

 東京臨海副都心エリア(東京ベイエリア)でトムスが企画運営する、 EVカートコース「シティサーキット東京ベイ」が2023年12月にグランドオープンしてから、約半年が経過した。

 この施設を統括するトムスのモビリティ事業本部・井上貴弥本部長に現状報告と今後の展開についてお話をうかがった。

 シティサーキット東京ベイ(CCTB)は、現在のところ東京23区唯一となる“都市型サーキット”として作られたモータースポーツとテクノロジーが融合したエンターテインメント施設である。

【モータースポーツ特集】都内で気軽にEVカートを走らせる
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 ゆりかもめ青海駅から徒歩1分の好立地にあり、2022年8月に閉業したお台場の商業施設パレットタウン跡地の一部を利用している。屋内外に2種類のコースが用意され、本格的なEVレーシングカート走行が楽しめるほか屋内施設ではVRなどを用いたレーシングシミュレーターでe-MotorSports体験ができる。シャワーやVIPルームなども完備されホスピタリティも充実。子どもから大人まで、男性でも女性でも、さらには免許を持たない人や、障害を持った方など、誰もがカートを通じてモータースポーツの魅力を手軽に体験可能だ。

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(画像=VIP会員になるとVIPルームやVIPテラス、VIP駐車場などが利用でき、営業時間外の走行も可能など、特典がたくさん用意されている。年間会費は400枚の走行チケット付きで220万円、『CAR and DRIVER』より引用)

 来場者数は、おおむね狙いどおりだという。客層を分析すると、約3割が免許のない人や初めてカートを体験する人、近隣に住む人が来場しており、約3割はカート経験者やリピーターの来場者、残りの4割がインバウンドによる観光客だ。外国人観光客は増加傾向にあり、平日に至っては来場者の約8~9割に及ぶ日もあるという。

【モータースポーツ特集】都内で気軽にEVカートを走らせる
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

「モータースポーツに触れられる場所は少なく、未経験の人にとってイメージがわきづらいことが昨今の人気低迷につながってると感じています。野球やサッカーが人気があるのは、誰もが一度は体験したことがあるスポーツだからです。体験があるからこそプロの選手の凄さが実感できますし、結果として多くの人を惹きつけています。モータースポーツ(カート)も同じで、体感が伴えば、レースを見る際にもいままで以上に楽しく感じることができるでしょう。レーサーの凄さが肌で感じられるはずです。そうすると世界が広がっていくと思うんです」と井上本部長は話す。

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(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 シティサーキット東京ベイには、モータースポーツのすそ野を広げ、初めて体験するきっかけの場になってほしいという思いのもと、さまざまな工夫が凝らされ、種類の異なるイベントの会場としても活用されている。

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(画像=ファミリーやカップルを対象にした2人乗りカート。ドライバーの身長は150㎝以上、パッセンジャーの身長は不問。利用料金は4分間3000円、『CAR and DRIVER』より引用)

 一例を挙げると、5月にはキャスター付きの事務用いすに座って走り続ける耐久レース“いす-1 GP”のコースとして使用され、今後はサイクリングやウォーキングイベントなどを企画している。その理由は、こういったアクティブな人たちが集まるイベントを開催することで、ちょっとした空き時間にカートも楽しんでもらいえれば、という思いがあるからだ。

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(画像=シティサーキット東京ベイはファステストラップ・チャレンジを開催して月間の最速ドライバーに豪華賞品をプレゼントする企画を展開している。腕自慢はぜひ挑戦してみよう。また、屋内コースわきにサイバートラック(ドライビングシミュレーター)を用意して、ドライビングスキル向上をサポートしている、『CAR and DRIVER』より引用)

 初心者を大切にする施設だからといって、面白みに欠けるコースというわけではない。実際、攻め甲斐があるサーキットだ。

 SKY TRACKと呼ばれる全長400mの屋外コースは、ストップアンドゴーと高低差が微妙にあるタイトなコーナー群が組み合わされたテクニカルなレイアウトになっており、ドライバーを飽きさせない。

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(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 筆者もステアリングを握って、トラックを楽しんだのだが、一般道ではできないようなハードブレーキングや、タイヤが滑るか滑らないかのギリギリのラインを攻める、非日常的な楽しさがあった。 EVカートだからできる数々の楽しみ方  EV化による重量増はあるものの、ハイグリップなタイヤ特性と、モーターの力強いトルクにより、タイトコーナーでもグイグイ前へ進んでいく。参考までに私のベストタイムは31.7秒。しかしその日のトップタイムはさらに1秒速かった。KYOJO CUPにも参戦中の金本きれい選手による記録だった。

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(画像=キッズカートは身長105〜149㎝を対象に屋内コースを利用する。料金は19時までは5分間2000円、19時以降は同3000円。夜間はプロジェクションマッピングの演出がある、『CAR and DRIVER』より引用)

 カートが電動されたことのメリットとして、環境にいい、静音性に優れている点が注目されがちだが、電動化の恩恵はこれだけではない。モーター出力など、運転制御部分の多様化が可能になった点だ。

 たとえば、コース上で事故などが発生した際には、走行中の全車両の速度リミッターを制限して、誘発事故を防いでいる。また、カートマシンの性能調整も簡単になり、各車両の性能差を減らして、イコールコンディションが作りやすい側面もあるという。

 開園後のエピソードとして、車椅子のお客様の話がある。この方は、障害を理由に他のカートコースでは乗車を断られたそうだが、シティサーキット東京ベイでは遠隔操作ができるEVカートと安全対策の徹底により、安全性を十分に担保できると判断し、カートを楽しんでいただいたという。

 7月15日、9月23日、11月24日には、日本最速のEVレース「2024年全日本カート選手権EV部門」の全日本大会が開催される予定だ。

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(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 大会では、キッズ向けのイベントやタンデムカートを使ったトップドライバーとの同乗走行など、観戦に訪れた人たちが楽しめる催しを立案中。さらに、コースの照明が充実しているCCTBでの大会では、ナイターでのレース開催もプランに上がっているそうだ。

カートEV選手権出場チームがドラフト会議開催

 5月30日、シティサーキット東京ベイで、全日本カート選手権EV部門・大会概要およびチーム体制発表会が行われた。6チームがドライバー2名をプロ野球のドラフト会議の型式で選手を指名。2024年シーズンのチーム体制を決めた。

 佐藤蓮選手や小高一斗選手ら、国内トップカテゴリーで戦うドライバーをはじめ、KYOJO CUPに参戦する金本きれい選手、13歳の酒井龍太郎選手、松井沙羅選手らが指名された。

 シティサーキット東京ベイは7月の第3戦以降の開催地になっている。全日本トップで戦う選手たちの走り観戦すれば、カートテクニックの向上につながるはず。トップカテゴリーにステップアップする将来のスタードライバーの走りを確認するチャンスだ。

文・横田康志朗/提供元・CAR and DRIVER

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