もし、ウクライナが降伏したり、ウクライナに不利な停戦が成立し、ロシアによるウクライナ侵略が成功すれば中国による「台湾武力侵攻」すなわち「台湾有事」が早まる可能性がある。その場合、中国は米軍の軍事介入の有無や台湾への武器援助の内容と程度、米軍が軍事介入する場合の日本自衛隊の動向、米国による経済制裁の有無内容程度などを早急に分析検討し、「台湾武力侵攻」の準備を加速させるであろう。
逆にロシアによるウクライナ侵略が失敗しプーチン政権が大きなダメージを受けた場合は、何よりも共産党政権の維持安定を重視する習近平政権は、当面「台湾武力侵攻」を留保し「平和統一」を目指す公算が大きい。その意味でも欧米諸国のみならず、日本政府によるウクライナ支援も極めて重要である。
画期的なウクライナの電撃的「対ロ越境攻撃」今回のウクライナによる「対ロ越境攻撃」に対し、評論家の舛添要一氏はツイッターで「勝利につながらない愚策、西側の結束を乱す」と批判している。親ロシア派とみられる鈴木宗男氏もおそらく同意見であろう。
しかし、筆者は画期的であると高く評価する。なぜなら、電撃的な想定外の奇襲攻撃を受けたロシアに対し、国際法違反のウクライナ侵略の成功が今後もいかに困難であるかを改めて認識させたからである。このことはウクライナにとって今後受け入れ可能な停戦の機会を与えるであろう。そのうえ、前記のとおり、中国習近平政権に対し「台湾有事」を抑止する重要な要因にもなるからである。