1月21日未明、小惑星がドイツ・ベルリン付近の上空に飛来し、明るい光を放つ「火球」を生み出しました。

火球は一般に定点カメラなどで偶然に撮影されることがほとんどで、前もっての観測や予報が難しいことで知られます。

しかし今回は大気圏衝突の約3時間前に発見され、衝突が事前に予報されていた点で非常にレアなケースとなっています。

実際、地球への衝突前に発見された小惑星としてはこれが8例目とのことです。

ドイツ上空で撮影された火球の映像は、日本や世界各国で大きな話題となっています。

衝突前に小惑星を発見!

小惑星を最初に発見したのは、ハンガリーにあるコンコリー天文台・ピスケーシュテテー観測所の天文学者であるクリスチアン・サルネツキー(Krisztián Sárneczky)氏です。

サルネツキー氏は1月20日の現地時間22時48分頃に、観測所の天体望遠鏡を使って、地球に飛来する直前の小惑星を発見しました。

同氏は暫定的に「Sar 2736」と命名しましたが、後に小惑星センター(MPC)によって「2024 BX1」の符号が与えられています。

こちらがサルネツキー氏の観測した2024 BX1の映像です。

サルネツキー氏の観測から約2時間後、欧州宇宙機関(ESA)が運用する小惑星監視システム・Meerkatでも2024 BX1の存在が確認され、地球の大気圏に衝突することが断定的となります。

そして日を跨いだ翌21日の現地時間1時30分頃、2024 BX1は事前の予報通りの時間にドイツ・ベルリン西部にあるブランデンブルグ州のネンハウゼン上空へと落下しました。

2024 BX1は大気圏衝突により明るい光を放つ火球となり、夜空を流星のように横切る姿がドイツ西部を中心に各地で目撃されています。

またドイツの他にフランスやチェコでも火球が見られたという。

こちらがその貴重な瞬間を捉えた映像です。

カナダ・ウェスタンオンタリオ大学(UWO)の天体物理学者デニス・ヴィダ(Denis Vida)氏によると、衝突前の2024 BX1の直径はわずか1メートル程と推定されており、地球には何らの被害ももたらさなかったと考えられるという。

一方、大気圏衝突によって2024 BX1は崩壊したと見られ、「おそらくいくつかの隕石が地上に落下したでしょう」と指摘しました。

欧州宇宙機関は近いうちにも落下した隕石の捜索と回収を行う計画を立てています。

こちらは平塚市博物館の天文担当学芸員である藤井大地氏がX(旧Twitter)に投稿した2024 BX1の軌道です。

白線が2024 BX1で、青線が地球の公転軌道を表しています。

直径1メートルの小惑星が地球に飛来するのは何も珍しいことではありませんが、それが衝突直前に発見されるのは非常にレアなケースです。

欧州宇宙機関によると、直径30メートル未満の地球近傍小惑星(Near Earth Object:NEO)の99%はいまだ発見されていないという。

特にサイズが小さければ小さいほど、小惑星を事前に発見し、衝突を予報することが困難になります。

こうした観測の精度を高めることは、隕石落下による地上の被害を最小限に抑える上でも重要となるでしょう。

参考文献

Scientists discover near-Earth asteroid hours before it exploded over Berlin

Rare 75-Minute Warning Issued Before Asteroid Hit Earth’s Atmosphere Above Germany

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部