暗黒物質は存在しないのかもしれません。
カナダのオタワ大学(uOttawa)で行われた研究により、宇宙の年齢が既存の2倍近い267億年であり、暗黒物質が存在しない可能性が示されました。
新たな理論は天の川銀河の回転速度から遥か遠方の宇宙マイクロ背景放射にわたる最新の観測結果の両方で一致する、説得力あるものとなっています。
研究者たちは今回の成果によって「宇宙の年齢が267億歳であるとともに、宇宙が存在するのに暗黒物質を必要としないことを裏付けることができた」と述べています。
これまで暗黒物質について疑問を呈する論文はいくつもありましたが、実際の観測結果と一致しながら、暗黒物質を排除した論文は今回がはじめてとなります。
研究内容の詳細は2024年3月15日に『The Astrophysical Journal』にて公開されました。
暗黒物質は観測結果から理論を守る保護剤として誕生した
暗黒物質は通常の物質、光、電力、磁力などあらゆるものと相互作用せず、ただ1つ重力のみに関連した「見えない物質」と定義されています。
たとえば通常の水分子がある位置座標に暗黒物質を設置しても、互いに相互作用しないため押し合うことなく同居が可能です。
また光や電磁力と相互作用せず重力のみに従うことから、直接的に測定するには重力の検知装置が必要となります。
このような「見えない物質」の存在が囁かれるようになった理由の1つが、銀河内の星々の回転速度の測定結果にありました。
銀河内部の星々は、太陽系の惑星と同じように、中心部分が早く外縁部が遅く周回しています。
しかし星々の周回速度を詳しく測定したところ、銀河外縁の星々の周回速度が予想より遥かに早いことが判明しました。
また重力レンズと言われる、天体による空間の屈曲を利用したレンズが予想より強力である理由としても、暗黒物質の存在が追加されています。
このように暗黒物質は、理論と観測結果の隙間を埋めるための存在として用いられるようになりました。
観測できない暗黒物質の存在を付け加えることで、既存の理論が実にスムーズに機能したのです。
ある意味で暗黒物質は、既存の宇宙論を「観測結果の暴力」から守るための保護剤として機能してきたと言えるでしょう。
あとは暗黒物質の存在を確認できれば、全ては丸く収まります。
しかし暗黒物質を検出しようとする全ての試みは失敗し続けていました。
人類が考え得る全ての方法で試しても、なんら痕跡はつかめなかったのです。
さらに既存の宇宙論の試練は続きました。
近年のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測により、既存の宇宙論では、存在してはならない構造・形状をした銀河が発見されました。
既存の宇宙論でにおいては、観測された銀河がその構造や形状になるまでには数十億年かかるとされていたからです。
10億歳の宇宙に数十億歳の銀河がみつかったのですから、言い逃れはさらに困難なものになるでしょう。
(※同様に既存の宇宙論では「存在してはならない銀河」は次々と発見されてています。)
そこで近年では、既存の宇宙論の保護剤としての暗黒物質に見切りをつけ、暗黒物質に頼らず機能する新しい宇宙論を模索する試みが徐々に増えてきました。
たとえばたとえば2024年1月8日に発表された論文では、非常に離れた位置を巡る連星を観測することで、既存の宇宙論の土台となるニュートン力学やアインシュタインの重力理論が間違っている可能性が示されました。
代わりにこの研究では新たな「修正ニュートン力学(MOND)」が提案されており、MONDが暗黒物質の助けなしで連星の動きを予測できることが示されました。
(※このMONDでは長距離間で働く微小な重力が、理論値より高いことが示されています)
ニュートンとアインシュタインの重力理論が崩壊している連星を発見!
一方、オタワ大学の研究者が新たに提示した理論では、もっと別な角度から切り込みを行いました。