トリトンの赤道付近にはマスクメロンのような亀裂による模様がみられます。
これは氷の地殻が膨張と収縮を繰り返してできたものです。クレータがそれほど見られないことから比較的新しい地形と考えられています。トリトンの内部には放射性物質の崩壊による熱が存在し、この熱が氷の地殻を膨張させ、亀裂を形成する要因となっている可能性があります。
トリトン全体には希薄な大気が取り巻いていますが、その成分は主に窒素だと考えられています。
ところで、地球の衛星である月は地球から1年に2~3cmずつ遠ざかっていますが、これに対してトリトンは海王星に近づいいることがわかっています。
この原因は月と異なり、トリトンが海王星の自転の向きと逆向きの逆行軌道で公転しているためです。
この現象は次のように説明することができます。地球と月の場合、月の引力(潮汐力)によって地球の海面が盛り上がります。地球の自転は月の公転よりも速いため、潮の膨らみは月よりも少し前に位置します。これにより、月は地球の潮汐の膨らみから引っ張られる力を受けます。この力によって月の公転が加速され、公転の遠心力が強くなり月は地球から遠ざかります。
海王星とトリトンの場合、トリトンが海王星の潮汐で変形した部分から力を受けますが、逆行しているためトリトンの公転は減速されます。その結果遠心力が小さくなりトリトンは海王星に近づいていくことになるのです。
では最終的にトリトンは海王星に墜落してしまうのでしょうか?
現在の予測では、海王星に近づきすぎたトリトンは、いずれその潮汐力で引き裂かれバラバラに砕けてしまうと考えられています。
その後、トリトンの破片は海王星を取り巻く美しい環となることでしょう。実際にそんなことが起きるのは、何億年も先の遠い未来の話ですが…