最終的にマドゥロ政権は彼がオランダ大使館に潜んでいることをつきとめた。マドゥロ大統領も75歳の彼を逮捕して刑務所に送るよりも、彼を亡命させることを望んでいたという。何しろ、大統領選挙の勝利者が国外に出れば、彼を支持して新政権の誕生を望んでいた有権者も意気消沈するであろうと考えたようだ。

そこで、この場面で登場するのがサパテロ氏である。彼はその時、中国を訪問していて、サンチェス首相の北京訪問への下準備をしていた。サンチェス首相が唯一頼りにしているのがサパテロ氏だ。二人とも同じムジナである。

そこで、サパテロ氏の代理としてエドゥムンド・ゴンサレス氏と接触したのがベネズエラで影響力のある上述したエンドロ・ゴンサレス氏であった。両者は密かに交信して、エドゥムンド・ゴンサレス氏にカラカスのスペイン大使館に移るように説得。彼もスペインに亡命を望んでいたので9月5日に同大使館に移った。

マドゥロ大統領の腹心の二人がスペイン大使館を訪問

二日後の9月7日、マドゥロ氏の腹心デルシー・ロドリゲス副大統領と彼女の兄でベネズエラ議会の議長であるホルヘ・ロドリゲス氏の二人がスペイン大使館に現れた。デルシー・ロドリゲス副大統領はEUの制裁でEU圏内に足を踏み入れることが禁止されている人物。だから、スペイン大使館は絶対不可侵ということで、彼女は入館できないはず。ところが、大使のラモン・サントス氏はそれを許すという重大な過ちを犯した。

スペイン大使館内で交渉が行われた。その基本的な内容はエドゥムンド・ゴンサレス氏が自らの勝利を放棄すること。その代りに、スペインへの亡命を許可するというもの。それを受け入れない場合は無期懲役で収監されることになっていた。この二者択一を迫ったのである。勿論、エドゥムンド・ゴンサレス氏は当然スペインへの亡命を希望した。

実際、9月5日からサント・ドミンゴでスペインの軍機が既に待機していて、彼が亡命することを承諾し署名したあと、待機していた軍機がカラカスに着陸。彼と夫人を搭乗させてスペインに向かったのである。