1989年に公開された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』。劇中で描かれた2015年の世界は、当時の観客にとって、まさに想像を超えた未来だったに違いない。
それから35年以上が経ち、現実の世界は映画にどこまで近づいたのだろうか?劇中には、空飛ぶ車や自動で靴ひもが締まるスニーカー、そして、かなり奇抜なファッションなど、奇想天外なガジェットや技術が登場する。
タイムマシンを搭載したデロリアンはまだ実現していないものの、科学者たちは劇中の描写には、フィクションよりも科学的事実の方が多いと指摘する。主人公マーティが装着するVRヘッドセットからホログラム映像、モバイル決済まで、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』は、現代のテクノロジーを驚くほど正確に予測していたのだ。
現実になった未来技術:映画の驚くべき予測精度
- VRヘッドセット:1989年からApple Vision Proを予言?
劇中でマーティの家族が装着している、JVC製のヘッドセットは、現代のVRヘッドセットに比べると少々大きく、古めかしいデザインだが、1989年当時としては、極めて斬新な未来予測だったと言えるだろう。
実際、世界初の商用VRヘッドセットであるOculus Riftが発売されたのは、それから約30年後の2016年のことである。興味深いことに、マーティのヘッドセットは、2023年に発表されたApple Vision Proのデザインや機能と酷似している。どちらもワイヤレスで、コントローラーを使わずに操作できる点が共通している。
さらに、Apple Vision Proは、現実世界にデジタル情報を重ねて表示する「拡張現実(AR)」にも対応している。劇中でマーティの息子がヘッドセットを装着したまま食事をしているシーンは、まさにAR技術を予見していたかのようだ。
- ホログラム映像:あのエルヴィスが現代によみがえる
未来の街を歩いているマーティが遭遇する、映画『ジョーズ19』の巨大なホログラム広告。ホログラム映像は、2000年代半ば以降、コンサートやイベントなどで広く利用されるようになった。
近年では、ホログラム技術の進化により、より大型で精細な映像が投影可能になった。スウェーデンのポップグループABBAは2022年から、ホログラムと生バンドを組み合わせたコンサート「ABBA Voyage」を開催し、大きな成功を収めている。映画館でホログラム映像が普及するには、まだ時間がかかりそうだが、『ジョーズ19』のような、度肝を抜くような演出が実現する日もそう遠くないかもしれない。
- キャッシュレス決済と生体認証:今や生活に欠かせないテクノロジー
劇中では、マーティがタブレット端末のようなデバイスで募金するシーンや、悪役のビフがタクシーの支払いをモバイル決済で行うシーンが登場する。今日では当たり前の光景となったモバイル決済だが、1989年当時は非常に斬新な発想だったと言えるだろう。
また、劇中には、指紋認証システムが登場するシーンも何度か登場する。現代では、ほとんどのスマートフォンに顔認証や指紋認証が搭載されており、デバイスのロック解除、個人情報の保護、そして支払いの承認などに利用されている。
モバイル決済といい、指紋認証といい、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の未来予測の精度の高さには、ただただ驚かされるばかりである。