激動の時代において組織が生き残るためには、人材抜擢などの組織改革が不可欠である。だが性急な改革は守旧派の反発を招き、かえって混乱を生む恐れがある。幕末維新を勝ち抜いた薩摩藩・長州藩・土佐藩を参考に、あるべき組織運営のあり方を考えてみよう。今回は薩摩藩を取り上げる。
藩論の分裂、内部での粛清が発生した長州藩・土佐藩と異なり、薩摩藩は組織の結束を維持したまま幕末の政局を乗り切った。その秘訣は、兄である島津斉彬の急逝を受けて藩政を主導した島津久光のリーダーシップにあった。
西郷隆盛を見出した名君として有名な島津斉彬の影に隠れ、久光は地味な存在である。司馬遼太郎に至っては久光を暗君とみなしている。
しかしながら、斉彬亡き後、薩摩藩の舵取りを担った久光の存在がなければ、明治維新は実現しなかったと言っても過言ではない。