両国は、あとは医療、農業、人文関係、文化といった分野での協力という実務的な内容を約した。ゼレンスキー大統領のSNS投稿で、インドとの関係悪化が懸念されていたところであった。両国ともに大人の対応をしたことは、評価されるべきだろう。
記者会見において、同行していたジャイシャンカル外相に、モディ首相がプーチン大統領と抱擁したことに関する質問が、BBC記者から投げかけられた。ジャイシャンカル外相は、「それはあなた方の文化でなくても、われわれの文化だ、モディ首相はゼレンスキー大統領とも同じことをした」と答えた。
ウクライナではロシアに関する文化、言語、宗教を排斥する動きが顕著になってきている。ウクライナを支援する欧米諸国も、キャンセル・カルチャーの本家本元だ。ロシアの悪魔化と排斥の動きが目立つ。
徹底的にロシアを外交・政治・経済から追放し、ロシアとの接触を断ちまくることが、正義である、という確信にのっとった行動が、特に波紋を投げかけるのは、ロシアと付き合う者たちまで排斥しようとすることだ。ロシアとの関係を維持するベラルーシのみならず、ハンガリーも、キャンセル・カルチャーで排斥したい。どこまでも果てしなくロシアを排斥し、ロシアと接触した者を排斥しようとしている。
この動きは一般の人々にも大きく波及している。「親露派」とみなすものを糾弾して排斥しようとする運動、隠れた「親露派」を暴き出して排斥者リストに載せていく運動が、世界的規模で進行中だが、これはウクライナ政府がやっていることというよりも、ウクライナ支持を表明している人々が、自分のウクライナを支持したいという感情を社会的に表現するための形態として、行っていることである。
このようなキャンセル・カルチャーをどこまでも果たしなく続けていくと、ウクライナは戦争に勝てるのか。目指している目的を達成できるのか。不明である。誰も議論していない。ロシアに関するものを全て排斥する、という運動が、それ自体が正義として、自家撞着的に拡大している。